2人部屋の差額ベッド代がいくらだったか、これもはっきりとは覚えていないが、1日5000円くらいだったのではないかと思う。これもかなり高額だし、ずっと払い続けられる金額ではない。
しかし、そのときの私は病気に打ちのめされていた。精神的にもまいっていたので、人と同じ部屋というのは耐え難く思われた。なので、いきなり6人部屋というのはとても無理に思え、せめてしばらくの間だけでも2人部屋にしたいと思った。
この選択が、大きな間違いだったのだが、そんなことは初めての入院の私にわかるはずもなかった……。
相部屋となったのは
まさかの人物だった
引っ越し先の2人部屋の、もうひとつのベッドには、40代前半くらいに見える、頭を角刈りにした精悍な男がいた。点滴もそのときはしておらず、ベッドに座っていて、あまり具合が悪そうには見えなかった。
どういう職業の人か、見た目からはちょっと見当がつかなかった。しかし、着替えのときになってすぐにわかった。
1日1回、病院のお仕着せが配付されて、それに着替える。同室の男性は自分で着替えられるので、お仕着せが届いたら、さっさと着替えをはじめた。それが、なぜかベッドの上に仁王立ちになって、着替えるのだ。こちらに背中を向けていた。まず全身、上も下も脱ぐ。驚いたことに、ふんどしをしていた。
しかし、さらに驚いたのは、全身に鮮やかな入れ墨があったことだ。手は手首まで、足は足首まで、びっしり入れ墨がある。ふんどしなので、両方のお尻ほっぺたも見えているが、そこにも入れ墨が入っている。
「やくざだ!」と思った。暴力団というより、やくざという感じだった。なぜ、よりにもよって、やくざと2人部屋になってしまったのか。愕然とした。
そういう入れ墨は、映画でしか見たことがなかった。最近のタトゥーのようなものとはちがって、高倉健の映画に出てくるような、古風な入れ墨だ。今でもこういう人がいるのかと驚いた。
入れ墨は「ガマン」とも呼ばれるくらいで、ずいぶん痛いらしいし、熱も出るという。だから、背中だけでなく、全身に彫っているのは、すごい人なのだ、ということをどこかで聞いて知っていた。







