私はまさに凍りついた。元気でもこんな人と同室はつらい。なのに、こんなに弱った状態でこんな目に遭うとは!

 しかしもちろん、苦情は言えない。別の部屋にしてほしいなどと看護師さんに泣きつけば、それは当然、隣りに聞こえるし、それで他に空きベッドがなくて替えてもらえなかったら、悲惨なことになる。

 その後、隣りの人にはたくさんのお見舞いが来た。それはまさにそういう人たちだった。

 親分らしいのが、大勢を引き連れてやってきたこともある。隣りの男は、ベッドの上に正座をして頭を下げて話をしていた。私は隣りで身を縮めて、いてもいない存在になるように息を殺していた。

 2人のベッドの間にはカーテンがあって、それで仕切ることができるのだが、私のほうが窓側だったので、それを閉めると隣りの男は日陰になる。だから男は、一度としてカーテンを閉めることはなかったし、もちろん私も閉めることはできなかった。

 看護師さんが私の処置をするときにカーテンを閉めてくれたが、看護師さんがいなくなると、たちまち隣りの男がカーテンを開けた。

男女2人で同室になり
肩身の狭い思い

 2人部屋には、すっかりこりごりした。

 だから、2人部屋には二度と入ったことはない──と言いたいところだが、かなりたってから、緊急入院したときに、他に空きベッドがなくて、仕方なく2人部屋に入ったことがある。

 本当に空きがなかったらしく、相部屋のもうひとりは、おばあさんだった。つまり、女性である。

 こっちも驚いたが、むこうは憤慨していた。

 おばあさんと、つきそいのおばさん(たぶん娘さん)とが、「男と同じ部屋にするなんて!」「年寄りだと思って、女あつかいしてないのよ!」「バカにしてる」などと、ずっと文句を言っていて、肩身がせまかったのなんの……。やっぱり、2人部屋はつらいのである。

 2人部屋で、平穏に過ごせたことは、一度もない。

 初めて入院する人にお勧めとしては、個室に入れるお金があればそれもいいと思うが、それでなければ2人部屋より、6人部屋のほうがずっといい。

 のちに4人部屋というのも体験したが、やはり6人部屋のほうがよかった。人数が多いほうが、かえって人間関係は楽だ。24時間いっしょという濃すぎる関係なので、なるべく注意や責任が分散されるほうがいい。

 2人部屋から6人部屋に引っ越して、度の強すぎるお酒を水割りにしてもらえたように、ほっとした。