大きなケガや病気、入院などの際に必ず使うべきなのが高額療養費制度。医療費が高額になったときに自己負担額を軽減してくれるものだが、実は使い方にはコツがある。連載『医療費の裏ワザと落とし穴』の第269回では、もしものときに絶対知っておくべき高額療養費制度の裏ワザを3つ紹介しよう。(フリーライター 早川幸子)
医療費が100万円かかっても
高額療養費制度で自己負担は9万円に
「高額療養費」は、医療費が高額になったときに、患者が自己負担するお金を軽減してくれる公的な医療保険(健康保険)の制度だ。
医療費が家計の大きな負担にならないように、患者が支払う自己負担額が一定の範囲に収まるように設計されている。
この制度があるおかげで、たとえ医療費そのものが100万円、300万円、500万円と高額になっても、患者が自己負担するお金は数万円~数十万円程度に抑えることができるのだ。
病気やケガをしたときの強い味方になる制度だが、実は、その人の状況に応じて、さらに医療費を抑えられる裏ワザがある。今回は、この高額療養費をさらにお得に使う方法を考えてみたい。
病院や診療所を受診すると、窓口では、年齢や所得に応じて、かかった医療費の1~3割を自己負担する。風邪や胃腸炎、ちょっとした打撲など、日常的な病気やケガの治療費は数千円~数万円だ。たとえ、医療費の1~3割を支払っても、家計へのダメージは低く抑えられる。
だが、がんや脳血管疾患、大腿骨の骨折など、大きな病気やケガをすると、医療費の1~3割といえども自己負担額は高額になる。たとえば、医療費が500万円かかった場合は、3割負担で150万円、2割負担で100万円、1割負担でも50万円だ。医療費が家計の大きな負担となり、それが原因で貧困に陥ってしまう可能性がある。そこで、1973年に導入されたのが高額療養費だ。
医療費が一定額になるまでは、通常通りに1~3割を支払うが、そのラインを超えた部分の医療費の自己負担額が軽減されるという設計になっている。この自己負担限度額は、70歳未満、70歳以上で分かれているが、今回は70歳未満の人のケースで見ていこう。ちなみに、これとは別に、新型コロナウイルス感染症で入院した場合に限り、2024年3月までは、通常の高額療養費の自己負担限度額から、原則的に1万円を減額する公的支援が行われている。
●余裕があれば、あえて限度額適用認定証を使わないのもアリ