夏休みも後半に入り、「夜更かしが増えた」「朝なかなか起きない」「一日中ゴロゴロしている」と、子どもの生活リズムが気になり始める家庭も多いだろう。実は、夏休みに子どもが動かなくなるのは、本人の体力や意欲だけが原因ではない。海外の研究では、学校がある時期に比べて、夏休みは身体活動が減り、スクリーンを見る時間が大きく増えることがわかっている。新学期を前に生活を立て直すコツを紹介する。
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「通学」も「休み時間」も…実はあなどれない運動量
学校がある日、子どもは決まった時刻に起きて家を出る。通学し、教室を移動し、休み時間には席を立つ。体育がない日でも、子どもは一日のあらゆる場面で体を動かしている。
夏休みに入ると、この流れが消える。
オーストラリアの子ども133人を、学校のある時期と夏休みの両方で調べた研究では、夏休み中、息が弾む程度以上の身体活動は1日12分少なかった。一方、座って過ごす時間は27分、画面を見る時間は70分増えた。睡眠も12分短くなり、食事の質も落ちていた(*1)。
朝食を終えても、次の予定がない。そんな日は、すぐに始められる動画やゲームに手が伸びやすい。気づけば、1日がそのまま過ぎていく。
勉強中心の「学校生活」でも、子どもはよく動く
学校がある日は、起きる時刻や行く場所、食事、休み時間などがある程度決まっている。子どもがそのつど「次に何をするか」を考えなくても、時間が来れば授業が終わり、席を立ち、別の場所へ移る。
一方、夏休みのように予定の少ない日は、次の行動を始めるきっかけも減る。その結果、座って過ごす時間やスクリーン時間が増え、睡眠や食事のリズムも崩れやすい。学校がある日と休日にこうした違いが生まれる理由を説明する考え方が、「構造化された日仮説」である(*2)。
ここでいう構造化とは、行く場所や始める時刻が決まり、大人の見守りもあるため、子どもが強い意志を出さなくても、次の行動へ移りやすい状態を指す。
興味深いのは、子どもを動かすために、必ずしも運動中心のプログラムが必要ではないことだ。
2020年の研究では、運動と健康を重視した夏季プログラムだけでなく、学習中心のプログラムに参加した子どもも、特に予定のない子どもより活動量が多く、座位やスクリーン時間が少なかった。就寝・起床時刻も早く、日によるばらつきが小さかった(*3)。
この結果は、構造化された日仮説の要点をよく表している。子どもを動かしていたのは、運動への意欲だけではない。朝に行く場所があり、一日がいくつかの活動に区切られていること自体が、座りっぱなしやスクリーン時間を減らしていた可能性がある。
拙著『体力がすべて』では、「体力がない」という状態を、本人の資質や根性だけで片付けず、睡眠や生活リズム、周囲の環境まで含めて考えた。夏休みに子どもが動かなくなるのも、体力や意欲が急になくなったからとは限らない。
先に失われたのは体力そのものではなく、起きる、移動する、次の行動へ移るという、体力を自然に使わせていた一日の枠組みである。
2025年に米国の小学生422人を対象として行われた無作為化比較試験でも、無料のサマーキャンプを利用できる子どもは、通常の夏休みを過ごした子どもより、中高強度の身体活動が一日15分多く、座っている時間は約30分、スクリーン時間は約14分少なかった(*4)。
この研究は低所得世帯の子どもを対象に米国で行われたため、数字をすべての家庭にそのまま当てはめることはできない。それでも、「もっと外で遊びなさい」と繰り返すより、行く場所や始める時刻を先に決めておくほうが、実際の行動を変えやすいことを示している。
立て直すなら、まず一つのきっかけを戻す
生活を立て直すために、学校と同じ時間割を家庭で再現する必要はない。全部を一度に整えようとするより、1日が動き始めるきっかけを一つ戻すほうが現実的だ。
まずは、朝に着替える時刻か、午前中に家を出る予定を1つ決める。
少し運動するよう促すだけでは、子どもはなかなか動き出せない。何をするかも、始める時刻も、自分で決める必要があるからだ。
朝10時に一緒に図書館へ行く、昼食前にスーパーまで歩くなど、予定が具体的に決まっていると、時間になった時に動きやすい。
朝の流れが戻ってきたら、次にスクリーンを終える時刻や就寝時刻を整える。2025年の研究でも、就寝時刻に関する家庭のルールがある子どもは、身体活動、スクリーン時間、睡眠などの複数の基準を満たしやすかった(*5)。
家でゴロゴロする時間を、すべてなくす必要はない。何もしない時間や退屈する時間も、長い休みにはあっていい。ただ、朝から晩まで何となく過ごし、そのまま1日が終わる日が続くと、生活のリズムは戻りにくくなる。
夏休みの残りは、新学期への助走にできる。朝の流れが少し戻っていれば、登校初日に生活を一から立て直さずに済むだろう。
1. Watson A, Maher C, Golley R, et al. Children’s activity and diet behaviours in the summer holidays versus school year. Pediatr Obes. 2023;18:e13029.
2. Brazendale K, Beets MW, Weaver RG, et al. Understanding differences between summer vs. school obesogenic behaviors of children: the structured days hypothesis. Int J Behav Nutr Phys Act. 2017;14:100.
3. Dugger R, Brazendale K, Hunt ET, et al. The impact of summer programming on the obesogenic behaviors of children: behavioral outcomes from a quasi-experimental pilot trial. Pilot Feasibility Stud. 2020;6:78.
4. Beets MW, Burkart S, Pfledderer CD, et al. Impact of free summer day camp on physical activity behaviors and screentime of elementary-age children from low-income households: a randomized clinical trial. Int J Behav Nutr Phys Act. 2025;22:159.
5. Dugger R, Williams T, Burkart S, et al. Family and Home Environment Predictors of Children’s 24-Hour Movement Guideline Adherence: A Mixed-Methods Study. Child Obes. 2025;21:297-308.






