2027年春から、総投資額1,000億円をかけて「トゥモローランド」を段階的にリニューアルするオリエンタルランド。大規模な投資に思えますが、財務的な不安はないのでしょうか。今回は書籍『サンキー図で「お金の流れ」が1秒でわかる 見るだけ決算書』で解説しているサンキー図を軸に、BS(貸借対照表)を俯瞰しながら、オリエンタルランドの「お金の集め方」と「その使い道」について、規模感や構造を細かく見ていきましょう。

BSサンキー図の右側=「お金の集め方」がわかる

まずはBSサンキー図の右側から「どこからお金を集めているのか」を読み解いてみましょう。赤色が負債、緑色が純資産の項目です。

オリエンタルランドのBSサンキー図(2026)オリエンタルランドのBSサンキー図(2026)

オリエンタルランドは、総資産の67.5%、約1.1兆円を純資産でまかなっており、負債よりも純資産の割合が大きい会社です。

なかでも目を引くのが、利益剰余金の1兆296億円です。利益剰余金とは、過去に稼いだ利益から配当などを差し引いて社内に残してきた累計額です。そのため、オリエンタルランドのように利益剰余金が多い企業は「自社の事業でしっかりと利益を残し、それを元手に事業を回している」とわかります。

同じテーマパークでも、富士急行は負債が中心

一方で、富士急ハイランドを運営する富士急行を見ると、BSサンキー図の印象は大きく違います。赤色の帯、つまり負債が目立つ形です。

富士急行のBSサンキー図(2026)富士急行のBSサンキー図(2026)

富士急行は総資産の58.2%を負債で調達しており、オリエンタルランドとは対照的な構造です。同じテーマパーク事業を手がける上場企業でも、お金の集め方はここまで異なります。

ただ、誤解のないように言えば、負債が多いこと自体は悪ではありません。自己資金だけでは難しい規模の投資を迅速に実行できる点は、借入の大きな利点です。その是非は「借りたお金を活用して、利益を生み出せているか?」で決まります。

BSサンキー図の左側=「お金の使い道」がわかる

オリエンタルランドのBSサンキー図(2026)オリエンタルランドのBSサンキー図(2026)

次にBSサンキー図の左側から、集めたお金がどのような資産に変わっているのかを見ていきます。

オリエンタルランドの資産で最も大きいのは、有形固定資産の8,372億円です。これは総資産の51.4%に相当します。テーマパークを運営する企業らしく、資産の半分以上が、土地、建物、アトラクション、設備などの事業基盤に投じられていることが読み取れます。

もうひとつ注目したいのが、現金及び預金の4,682億円です。総資産の28.7%を占めています。

オリエンタルランドのBSサンキー図(2026)オリエンタルランドのBSサンキー図(2026)

有形固定資産に多くの資金を配分している一方で、手元資金も厚く確保している点は、オリエンタルランドのBSを見るうえで重要なポイントです。

テーマパーク事業は、アトラクションやホテル、周辺設備への投資が欠かせないビジネスです。また、コロナ禍のように来園者数が大きく落ち込む局面もあり得ます。その意味で、厚い手元資金は将来の投資余力であり、不測の事態に備えるための安全余力でもあるのです。

左右をつなげると、利益への影響まで考えられる

最後に、オリエンタルランドと富士急行のBSサンキー図を並べて見てみましょう。

オリエンタルランドと富士急行のBSサンキー図|上:オリエンタルランド、下:富士急行オリエンタルランドと富士急行のBSサンキー図|上:オリエンタルランド、下:富士急行

まず「お金の使い道」に注目すると、両社とも最も大きい資産は有形固定資産です。大規模な施設を運営するビジネスのため、資産構成はよく似ています。一方、先ほど見た通り「お金の集め方」は大きく異なります。オリエンタルランドは純資産中心、富士急行は負債中心です。

ここで覚えておきたいのが、長く使う固定資産は、できれば純資産だけで、少なくとも純資産+固定負債でまかなうのが望ましいという原則です。固定資産は投じたお金を回収するまでに時間がかかるため、原則として1年以内に支払いや返済が必要となる流動負債では支えるのが難しいからです。

その視点でBSサンキー図を見てみると、オリエンタルランドは固定資産58.6%に対して純資産が67.5%。返済義務のない資金だけでまかなえています。富士急行は固定資産71.7%に対して純資産41.8%と届かないものの、固定負債40.5%と合わせれば上回ります。

ただし、借入金などの有利子負債が多いほど、利息によって利益が圧迫されやすくなります。その点、純資産中心のオリエンタルランドは金利負担の影響を受けにくい構造です。

つまり、2社は「何にお金を使っているか」は似ていても、「どこからお金を集めているか」は大きく異なります。BSは左右をセットで見ることで、資産と資金調達のバランスに加え、金利負担が利益に与える影響まで考えられるのです。

まとめ

決算書を数字の羅列として見ているだけでは、主な調達手段が負債なのか、純資産なのか、集めたお金をどの資産に振り分けているのかは直感的につかみにくいものです。BSサンキー図にすれば、企業がどこからお金を集め、どこに投じているのかが1枚でつながって見えてきます。

最後に、オリエンタルランドのBSについて簡単にまとめます。

・集め方|総資産1.6兆円のうち、純資産が67.5%
・使い道|有形固定資産が51.4%、現金及び預金が28.7%
・左右をつなぐ|固定資産58.6%を上回る純資産67.5%を持つ

今回はBSサンキー図を見ながらオリエンタルランドのお金の集め方と使い道を読み解きました。

こうした純資産の厚さと手元資金を踏まえると、総投資額1,000億円という規模だけで、財務面を過度に心配する必要はなさそうです。ただし、ほかの投資計画や今後の資金繰りも関わるため、今回のBSだけで不安がないと言い切ることはできません。これからの状況も注視していく必要があるでしょう。

このように、サンキー図にすると視覚的に企業の財務体質を観察・分析できます。さらに同業種の他企業との比較もしやすくなります。ぜひ一度、気になる企業で財務3表のサンキー図を作ってみてください。