疲れた仕事終わり、居酒屋に飛び込んで「とりあえず生で!」と注文して喉を潤す。日本のビジネスパーソンにとっておなじみの光景だが、この定番のルーティンを少し変えるだけで、オンとオフの切り替えが格段に上手くなる最高のお酒がある。『15か国・地域を飲んで旅する ワインの世界地図』著者の水上彩氏が、毎日の夕暮れ時を豊かにしてくれる「世界で一番売れている泡」の魅力に迫る。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

「とりあえず生!」の人が知らない最高の酒・ベスト1Photo: Adobe Stock

日常に居場所を見つけた泡・プロセッコ

世界で最も飲まれているスパークリングワインをご存じですか? 王様シャンパーニュ? ……実は、イタリアのプロセッコです。

なぜこれほど売れたのか。

勝因は、シャンパーニュと同じ土俵で戦わなかったこと、そして国を挙げた驚くべきルール変更にあります。

まず、プロセッコは基本、シャンパーニュのように1本1本瓶の中で発酵させません。密閉された巨大なタンクの中で一気に発酵させます(シャルマ方式)。

これは単なるコストカットではありません。タンクを使うことで、ぶどう本来のリンゴや白桃のようなフレッシュ&フルーティーな香りをそのまま閉じ込めることができるのです。

シャンパーニュやフランチャコルタ(イタリアのミラノ近郊で造られるシャンパーニュ方式の高級スパークリング)がハレのワインとしたら、プロセッコはまさに日常の泡。

仕事終わりの「まずはビール!」代わりに飲める気軽さが魅力です。

明確なポジショニングは、世界の日常を制覇しました。夕暮れ時のイタリアの広場を見れば、プロセッコをたっぷり注いだオレンジ色のカクテル「アペロール・スプリッツ」片手におしゃべりに興じる人々であふれています。

「アペリティーボ(食前酒)しない?」

それは単にお酒を飲むことではなく、仕事とプライベートを切り替え、おしゃべりを楽しむ時間を持つということ。

プロセッコが輸出したのは、人生を謳歌する時間の使い方(ラ・ドルチェ・ヴィータ)そのものだったのです。

水上 彩(みずかみ・あや)

ワインジャーナリスト/コラムニスト
1986年生まれ、神奈川県鎌倉市育ち。お茶の水女子大学理学部卒業後、大手通信企業を経てワイン業界へ。世界最大のワイン教育機関WSETが認定する、国内でも取得者の少ない最難関資格「Level 4 Diploma」を保持。
『Forbes JAPAN』オフィシャルコラムニストとして、ワインをビジネスや文化の視点から紐解く一方、国内外の産地を精力的に訪問し、ストーリーを丁寧に紡ぐ執筆活動を展開。スーパーで手に入るデイリーワインからハレの日の1本まで等しく愛し、初心者目線の解説に定評がある。また、茶道や着物を日常に取り入れたライフスタイルを実践し、ワインと日本の美意識を交差させた独自の楽しみ方を発信している。趣味はアルゼンチンタンゴ。