レストランでワインを選ぶとき、いまだに「重めか、軽めか」という基準だけで悩んでいないだろうか。実は今、世界のワイントレンドは「味の重さ」や「権威ある格付け」といった正解探しから大きくシフトしているという。小難しい知識にとらわれず、もっと自由に最高の一杯と出会うための新たな視点を、ワインの専門家・水上彩氏の著書『ワインの世界地図』から一部抜粋して紹介する。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)
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現在、日本人のワイン年間消費量は、一人当たりボトル3~4本分と言われています。
「海外に比べればまだまだ」という声もあります。けれど、数字の多寡だけで文化は測れません。
コンビニに、居酒屋に、当たり前のようにワインが置かれ、私たちが選択肢の一つとして自然に選んでいる――その風景こそが、ワインがこの国に文化として浸透しつつある証拠だと思います。
所有から共感へ――Z世代の感性
今の市場を動かしているのは、ミレニアル世代やZ世代を中心とした新しい感性です。
飲み手の嗜好は、かつての「濃厚・パワフル」から「するすると飲める軽やかさ」へとシフトしています。
何年も寝かせる必要のある重厚なワインよりも、開けてすぐにおいしく飲めるスタイルが求められているのです。
世界的な赤ワイン離れと、白・泡・ロゼへの需要シフトも、まさにこの「軽やかさ」を求めるトレンドの表れといえます。
ステータスのために高いワインを買うのではなく、造り手のストーリーや倫理観(エシカルかどうか)に共感してお金を落とす。
環境負荷の低い缶ワインや、バッグ・イン・ボックス(BIB・箱ワイン)をあえて選ぶ。
NoLo Wine(ノンアルコール&ローアルコール)や、あえて飲まないソバー・キュリアスという選択肢も定着しました。
消費の質は、明らかに「量から質」へ、「所有から共感」へと成熟しています。
ワインに「正解」はない
以前の私たちは、ワインを前にするとつい「正解」を探そうとしていた気がします。
格付け、ヴィンテージ、複雑なテイスティング用語……。
果たしてこのワインの表現で合っているんだろうか。そこには厳然たる権威があり、知識がなければ足を踏み入れてはいけないような、どこか排他的な空気を感じていた方も少なくないでしょう。
しかし今は画一的な「正解」よりも、個性のあるワインが好まれる時代。
「共感」というキーワードは、ナチュラルワインや日本ワインブームとも深く結びついています。
現代の飲み手にとって、知識や権威は二の次です。
求めているのは、ラベル(エチケット)を見て直感的に「いいな」と思えるセンスや、グラスを傾けた瞬間に体が喜ぶようなわかりやすい味わい、そして共感できるストーリーなのです。
ワインジャーナリスト/コラムニスト
1986年生まれ、神奈川県鎌倉市育ち。お茶の水女子大学理学部卒業後、大手通信企業を経てワイン業界へ。世界最大のワイン教育機関WSETが認定する、国内でも取得者の少ない最難関資格「Level 4 Diploma」を保持。
『Forbes JAPAN』オフィシャルコラムニストとして、ワインをビジネスや文化の視点から紐解く一方、国内外の産地を精力的に訪問し、ストーリーを丁寧に紡ぐ執筆活動を展開。スーパーで手に入るデイリーワインからハレの日の1本まで等しく愛し、初心者目線の解説に定評がある。また、茶道や着物を日常に取り入れたライフスタイルを実践し、ワインと日本の美意識を交差させた独自の楽しみ方を発信している。趣味はアルゼンチンタンゴ。








