「考えた通りに生きなければならない。さもないと生きた通りに考えてしまうから」――『人生の経営戦略――自分の人生を自分で考えて生きるための戦略コンセプト20』で山口周さんが引くのは、フランスの作家ポール・ブールジェの言葉です。企業や製品が導入期、成長期、成熟期、衰退期を経るように、人生にも異なるステージがあり、そのステージごとに「やるべきゲーム」は全く違う、と山口さんは言います。マーケティングの基本概念「ライフ・サイクル・カーブ」を人生に当てはめると何が見えるのか。人生の全体地図を聞きました。(構成/小川晶子、ダイヤモンド社書籍編集局)

人生を振り返って後悔する人の共通点・ワースト1Photo: Adobe Stock

「試す」「築く」「拡げる」「与える」

――『人生の経営戦略』の中で、人生を4つのステージで捉えるという話がありました。ここを読んで、自分の人生を振り返る人は多いのではないかと思います。

山口周氏(以下、山口):そういった感想をよくいただきます。4つのステージについて解説しておきましょう。

私たちはいつ死ぬかわからないわけですが、平均寿命をいったん80歳+と置いて、マーケティングのライフ・サイクル・カーブに当てはめると、人生は4つのステージに整理できます。ライフ・サイクル・カーブとは、企業・製品・サービスが市場においてどのような推移をたどるかを示すものです。

導入期に該当するのが「人生の春」。子ども時代から30歳前後までで、キーワードは「試す」です。さまざまな物事に取り組み、自分は何が得意で何が不得意なのか、何に情熱を感じて何にシラけるのかを理解し、次のステージで追求する方向性を見つける時期です。

成長期に該当するのが30歳前後から50歳前後の「人生の夏」で、キーワードは「築く」。「ここ」と決めた領域に時間や労力をレーザーのように集光させ、人的資本と社会資本を築く時期です。

成熟期にあたる50歳前後から70歳前後が「人生の秋」で、キーワードは「拡げる」。夏に築いた資本を足がかりに、本業以外へ仕事のポートフォリオを拡げていきます。

そして70代以降の「人生の冬」のキーワードは「与える」。培った知恵をもとに、後進にアドバイスと機会とフィードバックを与える賢者のイメージです。「冬」と聞くと寂しく感じるかもしれませんが、とても美しく、人の温もりが感じられる季節でもあります。

「忙しい、忙しい」と人生が過ぎていないか?

――もう40代なのに、まだ「試す」段階から抜け出せていない……という人はどう考えればいいでしょうか。

山口:この整理はあくまで凡例的なもので、人によって各ステージの内容や年齢は大きく変わります。30代半ばまで人生についてさして考えずに生きてきた人が、あるタイミングで「生きることを考える」ようになれば、そこから「人生の春」を始めることもあり得るでしょう。

現実の世界では、キャリアの前半は金融の世界で活躍し、40歳を過ぎてからプロの画家になったゴーギャンのような人もいれば、キャリアの前半に聖職者とオルガニストとして活躍したのち、40歳を過ぎてから医師としての活動を始めて巨大な業績を残したシュバイツァーのような人もいます。

彼らが生きたのは平均寿命が60歳に届かない時代です。寿命が大きく伸びている現在なら、ある程度の年齢から「人生の春」をもう一度繰り返す「人生の二毛作」のような生き方も十分にあり得ると思いますよ。

いずれにせよ大事なのは、このフレームをもって「早すぎる」「遅すぎる」と考える必要は全くない、ということです。

それよりも避けたいのは、自分の人生の全体像=マスタープランを描かないまま、「忙しい、忙しい」と過ごしているうちに、あっという間に人生が終わってしまうことなのです。