「石の上にも三年」「継続は力なり」――誰もが一度は言われたことのある訓言です。ところが『人生の経営戦略――自分の人生を自分で考えて生きるための戦略コンセプト20』の著者・山口周さんは、こうした言葉を「呪い」と呼びます。20年以上、企業の経営戦略策定に携わってきた山口さんによれば、何が「正しい振る舞い」かは、その人がいま人生のどの「季節」にいるかによって全く変わるのだとか。世にあふれることわざや訓言との正しい距離の取り方を聞きました。(構成/小川晶子、ダイヤモンド社書籍編集局)
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「腰が据わらない」は悪いことか?
――何事も、自分に合うかどうかは試してみなければわかりませんが、「あれこれ試すばかりで長続きしない」というのは、一般にネガティブに語られます。どのように考えたらいいのでしょうか。
山口周氏(以下、山口):それはその人のライフ・ステージによります。
平均寿命をいったん80歳+と置いて、人生を4つのステージに整理すると、30歳くらいまでの「人生の春」、50歳くらいまでの「人生の夏」、70歳くらいまでの「人生の秋」、それ以降の「人生の冬」となります。
「人生の夏」以降に本腰を入れて極める領域を見つけるためには、その前段となる「人生の春」において、むしろ積極的にいろんなことを試して、自分が夢中になれること、他人より得意なことを見つけることが重要です。
一方で、本来何かに集中して人的資本や社会資本を蓄積するべき「人生の夏」に、あれこれと中途半端に試すばかりで腰が据わらないのは、ちょっとまずい状態です。
つまり、どのような考え方・構え方・動き方が適切かは、ライフ・ステージによって全く変わってくるんです。
ことわざは「呪い」になる
――なるほど。「常にこうするべき」というものではないのですね。
山口:そうです。「石の上にも三年」とか「継続は力なり」といったことわざや訓言は、当人の戦略や文脈と関係なく、常に守られるべきもののように語られますよね。人から思考や行動の自由度を奪う言葉のことを「呪い」と言いますが、これらの言葉はまさに「呪い」となって、その人の人生から戦略的自由度を奪っていきます。
経営において選択肢=オプションの縮小は最も避けるべき悪手ですが、これは人生の経営戦略においても同様です。「◯◯すべし」「◯◯すべからず」という言葉には注意が必要です。
呪いから自由になる唯一の方法
――どうすれば「呪い」から自由になれるのでしょうか。
山口:「考えることによって」と言うしかありません。自分の頭で考えて、誰がどう言おうと、自分にとって合理的だと思える人生の全体像=マスタープランを描くことができれば、世に蔓延する戯言に惑わされることなく、自分で着実に人生の戦略を実行していけます。
もうひとつ付け加えると、ステージの遷移には注意してください。人生はステージに応じて「役割や貢献」も大きく変わります。私たちはステージを移っていくごとに、新しい人的資本や社会資本を構築することが求められるのです。
20代は同期のエースとして大活躍していた人が、その後のステージではパッとしない。逆に20代はパッとしなかった人が、後から急激に頭角を現す。なぜそういうことが起きるかというと、ステージに応じてゲームの種目が変わり、求められる人的資本・社会資本が変化するからです。
危機はいつも「つなぎ目」で起きるものです。ステージが変わったのに従前の働き方を続けていれば、その人の信頼・評判・ネットワークといった社会資本は毀損されていくのです。





