恵まれた待遇のヘッジファンドを辞め、わずか1年でアマゾンを立ち上げたジェフ・ベゾス。「印象的なのは、このときベゾスが見せた『身も蓋もない焦り方』だ」と語るのは、『人生の経営戦略――自分の人生を自分で考えて生きるための戦略コンセプト20』の著者・山口周さんです。会議室で「時期尚早」を唱え続けた多くの経営者と、ベゾスは何が違ったのか。優れた経営者に共通するという、世の中の見方――「微分のレンズ」について聞きました。(構成/小川晶子、ダイヤモンド社書籍編集局)
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ベゾスを動かした「2300%」という数字
――『人生の経営戦略』の中で紹介されていた、アマゾン創業者のジェフ・ベゾスのエピソードが印象的でした。タイミングを決して逃さない姿勢がすごいですね。
山口周氏(以下、山口):ベゾスは1990年代の初頭、ヘッジファンドに勤務していましたが、そこで「インターネットの市場成長率は2300%」とするレポートを読んで衝撃を受け、非常に恵まれた待遇だったにもかかわらず退職してアマゾンを創業しました。
このエピソードはよく知られていますが、このときベゾスが見せた「身も蓋もない焦り方」が印象的なんですよね。1994年にヘッジファンドを退職し、拠点をニューヨークからシアトルに移して、一年後の1995年にはもうアマゾンのウェブサイトを公開している。会議室にふんぞり返って「時期尚早である」と貴重な時間を無為に垂れ流した多くの日本の経営者とは対照的に、非常に短期間で事業を立ち上げているんです。
「断面図」ではなく「変化率」を見る
――ものすごいスピードです。なぜベゾスは、そこまで急いだのでしょうか。
山口:ベゾスは、このタイミングがまさに「市場が爆発的に成長する一瞬」であることを見抜いていたからです。では、なぜ気づけたのか。ポイントは、彼が衝撃を受けた「2300%」という数値にあります。
多くの人は事業性を評価するとき、市場の規模や顧客の数など、その時点での「市場や社会の断面図」に意識を向けがちです。しかしベゾスが注目したのは「変化率」。数学の用語で言えば微分値なんです。
これはベゾスに限らず、優れた経営者にしばしば共通して見られる特性です。彼らは「微分のレンズ」とでもいうべき視点で社会の変化を捉えています。市場浸透率16%前後の「キャズム」を超えると市場は一気に拡大しますが、そのタイミングを捉えるうえで、これは非常に重要な視点です。
仕事ができない原因は「タイミング」
――私たち個人の人生にも応用できますか?
山口:もちろんです。個人にも組織にも「やっていることは間違っていないのに今ひとつパッとしない」ということはよくありますが、「タイミングが悪い」のが原因であることが少なくありません。キャズムのコンセプトは、このタイミングの問題を考えるときに良いフレームワークになるでしょう。
経営戦略では「WHAT=何を?」「HOW=どうやって?」に焦点が当たりがちですが、実は「WHEN=いつ?」という論点は同等か、それ以上に重要なんです。
ものごとの大きな変化が顕在化する前に、その兆候はすでに表れています。その「兆し」を捉えるには、微分のレンズで「変化率」に着目してみてください。





