いまや世界中の人が使うYouTube。しかし創業初期には、ベンチャーキャピタルから200回以上も出資を断られていたことをご存じでしょうか。そんな中でYouTubeの可能性を見抜き、投資を決めた名門ベンチャーキャピタルがありました。彼らは何を見ていたのか――。『人生の経営戦略――自分の人生を自分で考えて生きるための戦略コンセプト20』の著者・山口周さんが、「兆しを捉える」ための着眼点を解説します。(構成/小川晶子、ダイヤモンド社書籍編集局)
Photo: Adobe Stock
仕事ができる人は「人」を見ている
――「人生の経営戦略」を考えるうえで、時代の変化をとらえ、上手に波に乗るというのも大切だと思います。変化の「兆し」を捉えるには、何を見ればいいのでしょうか。
山口周氏(以下、山口):数多くのスタートアップの創設に関わってきたY Combinatorの共同創設者、ポール・グレアムは、「予測は無視して、人に着目すること」と言っています。
私たちは物事の趨勢がどちらとも決めかねるとき、つい安易に予測に頼ってしまいがちです。しかしグレアムに言わせれば、テクノロジーに関する長期予測は当たったためしがなく、これに頼っていれば必ず趨勢を読み誤るんです。
では何に頼ればいいのかというと、「人」です。あるジャンルの中核にいる「コア人材」の言動や話題を観察することで、これから何がやってくるかを捉えられる、という話なのです。
200回断られたYouTubeに、セコイアが投資できた理由
――それが実際に表れた例はありますか。
山口:YouTubeへの投資の局面が、たいへんわかりやすい例です。いまからは信じ難いことですが、YouTubeは初期の資金確保に大変苦労した企業で、ベンチャーキャピタルから200回以上も出資の要請を断られています。それ以前に登場した動画共有プラットフォームがことごとく失敗していたので、投資家たちは「また二の舞になるのではないか」と及び腰だったんです。
そんな中、名門ベンチャーキャピタルのセコイアキャピタルがYouTubeへの投資を決めます。セコイアのパートナー、ロエルフ・ボータは、YouTubeとは全く関係のない別のスタートアップの検討ミーティングに出席した際、参加者たちが休み時間中にYouTubeを見て盛んに会話しているのを目の当たりにして、そのポテンシャルに気づいたと話しています。まさに「人に着目する」ことで兆しを捉えたわけです。
ちなみにYouTubeの成功も「タイミングの問題」として考えると興味深いんです。回線スピードや録画品質の向上という環境変化によって、それまでスジの悪いビジネスだった動画共有が、ある時期から持続可能なビジネスに変わりました。ここにもタイミングが大きく関わっています。
未来は「偏在」している
――コア人材の観察は、個人でもできそうですね。
山口:ソフトバンクの孫正義さんは、しばしば「未来は偏在している」と語っています。私たちは暦の上では同じ年の同じ月日を生きていますが、世界のある特定の場所には、これからやってくる未来がすでに出現しつつある場所がある、ということです。
典型的なのはシリコンバレーのような場所です。休暇を取ってシリコンバレーに行ってみるのも一つですし、今は最先端のスタートアップのカンファレンスなどを動画で見ることもできます。そこにいる人々が何を話題にし、どのように振る舞っているかに着目することで、これからやってくる未来の「兆し」を捉えることができるのです。





