GoogleのロゴとスマートフォンPhoto:NurPhoto/gettyimages

Googleをはじめ、世界的な企業が取り入れている、思い込みに左右されず最適解を見つける方法とは。※本稿は、コラムニストのマシュー・サイド著、有枝 春訳『失敗の科学 成長する組織の条件』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を抜粋・編集したものです。

Googleの「青」を変えると
広告クリック率は上がる?

 Googleはある決断を迫られていた。当時、同社のトップデザイナーの1人だったジェイミー・ディヴァインが、Googleの検索ページに使う新たな青色のアイデアを出したのだ。

 彼はその青色に変更すれば広告のクリック率が上がると予測していた。ディヴァインがその青を選んだ根拠には説得力があった。見た目にも好感の持てる色で、消費者心理に関するデータにものっとった選択だった。そもそも彼はトップデザイナーの1人でもある。しかし、本当に彼が正しいかどうか、Googleはどうやって確認すればいいのだろう?

 従来なら、まず実際に検索ページの色を変えてみて、どんな結果が出るか調べる。しかしこれには明らかな問題がある。この方法では、たとえ広告のクリック率が上がったとしても、その原因は色を変えたことなのか、それ以外のことなのか判断ができない。しかも「色を変えなかったら、もっとクリック率が上がっていたかもしれない」という反事実も確認できない。

 そこで、Googleの幹部らが討議を続ける間、あるプロダクトマネージャーが検証を行うことにした。

 彼はまず、ディヴァインが選んだ色よりわずかに緑がかった青を用意した。そして、ユーザーがGoogleの検索ページを開くとランダムにどちらかの青のページに誘導するように設定し、そのあとの行動をモニタリングした。これぞRCT(編集部注/ランダム化比較試験。参加者を無作為にふたつのグループに分けて比較する、信頼性の高い研究方法)だ。

 結果は明白だった。緑がかった青のページのほうが、広告のクリック率が高かったのである。

 この件について、経営判断の際にありがちな混乱や言い争いは一切なかった。やったのは「コイン投げ」だけだ。適切な方法で、ランダムな比較検証を実施しただけだ(注1)。

 その結果ディヴァインの色が負けたからといって、彼のデザイナーとしての能力に問題があることにはならない。ただ、わずかな色味の違いが消費者行動に影響を及ぼす点について、彼が持っていた知識では少し足りなかったということだ。しかし今回の結果は、誰にも確実にはわからなかっただろう。世界はそれほど複雑だ。

(注1)効果的なRCTを実施するには、たとえばサンプルサイズを十分な規模に設定するなど、適切な方法を踏まえることが肝心だ。詳しくは以下参照。http://www.evanmiller.org/how-not-to-run-an-ab-test.html