多くの日本企業で問題視される「働かないおじさん」。彼らは最初から怠惰だったわけではありません。むしろ、かつては優秀なプレイング実績を持っていたベテランがほとんどです。彼らがなぜ、年齢を重ねるにつれて一切の行動を起こさなくなるのか。そこには、プライドと失敗への恐怖が引き起こす「行動制限」のメカニズムがあります。今回は、組織マネジメントのバイブル『リーダーの仮面』の教えをベースに、「働かないおじさん」へ転落する人の脳内で行われている致命的な言い訳を解き明かす。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)
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プライドが行動を止める
50代になり、「働かないおじさん」と揶揄されるようになってしまう人たちには、共通する行動パターンがあります。
それは、とにかく現場での実務や、新しいチャレンジから距離を置こうとすることです。
「それは若手の仕事だから」
「自分はもっと大局的な戦略を考えるべき立場だ」
こうやって、もっともらしい言い訳を並べて、泥臭く行動することを徹底的に避けます。
なぜ彼らは、頑なに打席に立とうとしないのでしょうか。
本質的な理由は、かつての成功体験とプライドが邪魔をして、「今さら失敗して恥をかく姿を若手に見せたくない」という恐怖を抱えているからです。
行動すれば、必ず失敗のリスクが伴います。そのリスクから逃れるために、彼らは「計画」や「分析」という安全地帯に逃げ込み、仕事をした気になっているのです。
計画に時間をかけすぎる
『数値化の鬼』という本で私は、この計画だけで満足し、肝心の行動を起こさない姿勢について、次のように痛烈に批判しています。
プレーヤーにとっては、行動量を極限まで上げていき、高いレベルで維持することが何より求められることです。
しかし、人は「量」より「質」を求める生き物です。
行動する前から「失敗したくない」という思いが強くあることでしょう。
特に、高学歴だったり、前職での成功体験がある人ほど、プライドが高くなり、失敗を恐れるようになります。
優秀であればあるほど、計画に時間をかけすぎて行動量が落ちてしまいます。
――『数値化の鬼』より
「完璧な計画を立ててから動く」というベテランの言い分は、往々にして「動かないこと」を正当化するための言い訳にすぎません。
ビジネスにおいて、行動が伴わない計画の数字は、ただの「絵に描いた餅」です。
計画の美しさにこだわり、実行(Do)を先延ばしにしている間に、ライバルや若手はとっくに行動し、失敗から改善を繰り返して先へ進んでいます。
50代の「働かないおじさん」は、そうやって安全地帯で腕組みをしているうちに、実務能力が完全に錆びつき、組織にとっての「コスト」になっていくのです。
バットを振り続けよう
50代から再び輝きを取り戻し、組織に不可欠な存在であり続けるためには、自分の内側にある「言い訳」を論理的に捨てるしかありません。
「昔はこうやって成果を出した」という過去の栄光は、現在の市場では何の価値もありません。
プライドという名の余計な感情を脇に置き、再び「Do(行動量)」の重要性を再認識するのです。
リーダーは「リーダーの仮面」をかぶり、ベテランだからといってプロセスでの特別扱いを一切やめ、行動量という事実だけで彼らを評価しなければなりません。
打席に立って失敗することは、決して恥ずべきことではありません。
本当に恥ずかしいのは、失敗を恐れて打席に立つことすら放棄し、陰で若手の不備を笑う「評論家」になることです。
どれほどの年齢になっても、謙虚にバットを握り、自分の限界を数字で直視して打席に立ち続ける。
その泥臭い挑戦の背中を見せるベテランこそが、組織の基準を引き上げ、自らの現役生活を劇的に面白いものに変えていくのです。




