会社で「替えの利かない存在」になりたい。そう願う個人のプライドが、実は組織の衰退を招き、さらには自分の将来の首を絞めていることに多くの人は気づいていません。「人は何によって動くのか」という行動原理を理解していないリーダーは、属人化という甘い罠に依存し、いつしか不要とされる存在へと転落していきます。この連載では、書籍『リーダーの仮面』をベースに、全ビジネスパーソンに必須の「リーダーシップ」のあり方を指南する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)
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「自分しかできない仕事」を誇る愚かさ
40代や50代のベテラン社員や管理職の口から、よく次のような自慢話が飛び出します。
「このトラブルの対処法は、私にしかわからない」
「取引先のA社長は、私だからこそ首を縦に振ってくれるんだ」
彼らは「替えの利かない存在」であることを誇り、自分自身の市場価値が高いと錯覚しています。
しかし、組織の視点から見れば、それは極めて危険な「属人化のリスク」でしかありません。
1人が欠けただけで業務がストップし、売上が激減する。
そんな脆い組織を作っているリーダーは、どんなに実績を出していようとも、マネジメントとしては完全に「失格」です。
組織の歯車であることを認める
『とにかく仕組み化』で私は、属人化の欺瞞について次のように看破しています。
この言葉は、麻薬だ。
組織の中で、「替えの利かない人」は、今の位置にとどまる。
「歯車として機能する人」は、人の上に立てる。
いっけん、逆だと思ったかもしれない。
しかし、残念ながら、これが真理だ。
――『とにかく仕組み化』より
自分が「いつでも替えの利く歯車」であることを認めることは、決して自分の価値を下げることではありません。
むしろ、「自分が不在でも組織が回る仕組み」を構築できる人こそが、最も優秀なリーダーとして上に昇りつめ、より巨大なプロジェクトを率いることができるのです。
ノウハウを独占し、ブラックボックス化することで自尊心を満たしている人は、定年退職を迎えて役職を失った瞬間、自らの拠り所をすべて失います。
社会の中で一瞬にして「居場所」を失うことになります。
「属人化」という誘惑を断ち切れ
40代以上のリーダーが本当に成すべきことは、自らが現場でヒーローとして活躍することではありません。
自分の仕事を誰にでも引き継げるマニュアルに落とし込み、属人化を徹底的に破壊することです。
部下からの「頼りにしています」という耳触りの良い言葉に惑わされ、自分の自尊心を満たしてはいけません。
リーダーは仮面をかぶり、冷徹に「仕組み」の一部として役割に徹し、部下を替えの利く。しかしどこでも通用するプロの歯車として育て上げる責任を負うべきです。
それこそが、会社に最大の利益をもたらし、自らの現役生活、そして定年後の人生を本当に豊かなものにするのです。




