一度決めた方針に頑なに固執し、状況が変化しているにもかかわらず「前言撤回」を恐れて失敗を隠蔽しようとする。この自意識とプライドが、いかに組織の意思決定のスピードを奪い、会社を腐らせていくかに多くのベテランは気づいていません。この連載では、書籍『リーダーの仮面』をベースに、全ビジネスパーソンに必須の「人間の行動原理」と、間違えたときに華麗に軌道修正する決断力の重要性について解説する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

組織をダメにする50代の管理職がやっていること・ワースト1Photo: Adobe Stock

50代管理職のプライド

 50代になり、ある程度のキャリアと部下を持つようになったリーダーが最も陥りやすい罠。
 それは、「自分が一度下した決断は、絶対に正しくなければならない」という思い込みです。

 市場のデータや現場の部下から「当初の計画通りではうまくいっていない」という不都合な事実(一次情報)が上がってきているのにもかかわらず、

「前にそう決めたから、とにかくこのまま進めてくれ」
「朝令暮改と思われたら、上司としての威厳が保てなくなる」

 と、無駄な自尊心からブレーキを踏み、軌道修正のタイミングを逸してしまうのです。

 しかし、不確実なビジネスの世界において、100%正しい意思決定を出し続ける天才など存在しません。

 本当に最悪なリーダーとは、「失敗を認めず、間違った意思決定をそのまま押し通す人」です。

前言撤回を堂々と言えるリーダー

パーフェクトな意思決定』という本で私は、この間違ったプライドを乗り越え、意思決定を「水のようにしなやかに修正すること」の重要性を次のように説いています。

仮説を立て、検証し、失敗を認め、修正をする。そのとき、「誰も個人を責めない土壌」が必要です。
もし、誰かが過去に決めた形骸化したルールがあるなら、それを壊す必要があります。
過去の自分が決めたことで失敗をしたら、それを考え直す必要もあります。
「パーフェクトな意思決定」というのは、そうやって変化に対応していくことが前提となります。
だから、「朝令暮改」という言葉を当然とするのです。
前言撤回は、堂々と言ってください。
「過去のルールは撤廃します」
「私のやり方は失敗でした」
特にリーダーは、そういうことを堂々と言うことが求められます。
それ言われた側も、受け入れないといけない。
また、逆にいうと、目立った失敗がない人は、人の上に立てないとさえ言えます。
――『パーフェクトな意思決定』より

 間違っていたら、素直に認め、一秒でも早く「修正」する。

 このサイクルを高速で回すことこそが、結果的にチームを勝利に導く「パーフェクトな意思決定」の真髄なのです。

役割の「仮面」をかぶれ

 50代の管理職が朝令暮改を恐れるのは、部下から「ブレている」「一貫性がない」と陰口を言われ、嫌われることを過剰に恐れているからです。

 しかし、チームのメンバーは、あなた個人に付き従っているのではなく、チームを勝利へ導く「上司という機能」に従っているにすぎません。

 だからこそ、リーダーはリーダーの仮面をかぶる必要があります。
 個人的な自尊心や恥じらいの「素顔」を隠し、役割としての仮面をかぶって、

「私の当初のやり方は失敗でした。本日をもってこのルールを撤廃し、明日からB案に切り替えます」

 と毅然と言い切るのです。

 一発で正解を当てようとする傲慢さを捨て、責任を持って華麗に修正を繰り返す背中を見せること。
 その冷徹なまでの決断のスピードこそが、結果として組織を救い、部下からの長期的な信頼を勝ち取る最大の近道なのです。