大規模調査が明らかにした
投手の故障リスクとは

 アメリカでは、MLBとアマチュア野球の統括団体USA Baseballなどが連携している。MLBは若年世代の健康被害を問題視して、ASMI(アメリカスポーツ医学研究所)とともに、大規模な調査を実施した。

 ASMIは、肩、肘の怪我の危険因子として、

・投球数
・投球動作のメカニクス
・球速
・球種
・マウンド

 の5つを挙げ、それぞれの因子について研究を深めた。

 ASMIの調査は今後、新たに生じる事象について調査する「プロスペクティブ研究(前向き研究)」と過去の事象について調査する「レトロスペクティブ研究(後向き研究)」の2系統で実施した。

・プロスペクティブ研究

 怪我をしていないリトルリーグの健康な投手410名に対し、2006~10年の5年間、毎年、電話で聞き取り調査を実施。調査の結果、約5%の投手が20歳までに重篤な腕(肩、肘)の障害を負うこと。そして年間100イニング以上投げると、障害発生率は3倍以上(3.5倍)になることがわかった。

・レトロスペクティブ研究

 14歳から20歳の投手のうち、肘の手術をした選手(66人)、肩の手術をした選手(29人)、健康な選手(45人)に聞き取り調査を実施。調査の結果、1試合当たり80球以上投げる投手は怪我のリスクが4倍になること、年間8カ月以上投げる投手はリスクが5倍になること、さらに疲労時に投球をするとリスクが36倍になることが分かった。

 さらにアメリカのMLB投手の出身地についても調査し、寒冷地出身の投手の方が、温暖地出身の投手よりもトミー・ジョン手術を受ける割合が低いことが分かった。

 これらの結果から、ASMIは、

・試合での多すぎる投球は避けるべきである
・少なすぎる投球、身体活動も避けるべきである
・若い時代に1つの競技を特化して行うことは避けるべきである

 という結論を出した。

研究は投球フォームや
体の使い方にも及んだ

 また投球のバイオメカニクス(生体力学)についても研究を進めた。個々の選手について、少年、高校生、大学生、プロ野球の段階で、それぞれ投球動作について解析を行い、年齢とともに、

・身長、腕の長さは増加する
・肩関節の最大外旋位は増加する
・特に思春期前期に、腕の軌跡、腕や体幹の動きは改善し、力やトルク(ねじる力)は増加する
・身体の成長と動きの改善によって、角速度、球速が増加する

 という結論を出した。