世界1200都市を訪れ、1万冊超を読破した“現代の知の巨人”出口治明元APU学長。宮部みゆき氏などから絶賛されている出口氏の『哲学と宗教全史』をもとに、哲学と宗教の視点から探る「中国の思想家・王守仁の知行合一の意味」とは? ライターの照宮遼子氏がレポートする。(構成/ダイヤモンド社・寺田庸二)

【哲学と宗教】「正解が出るまで動かない人」が一生わからないこと。「知行合一」が教える行動の意味とは?Photo: Adobe Stock

いくらでも襲ってくる不安の津波

 最初に転職したときは、次の仕事を決めてから会社を辞めた。収入が途切れる心配もなく、退職後すぐに新しい職場で働き始めた。

 だが、その次に仕事を辞めたときは、何も決まっていなかった。
 次の仕事はどうするのか?
 収入は大丈夫なのか?
 考え始めれば、不安はいくらでも出てくる。
 でも、すべてに答えを出してから動こうとしたら、いつまでたっても辞められない気がした。

王守仁の「知行合一」とは?

「考えること」と「行動すること」の関係について、一つの大きなヒントを与えてくれるのが、『哲学と宗教全史』(出口治明著)で紹介されている中国の思想家・王守仁(王陽明、1472~1528)である。

格物致知などといって、あれもこれもその本質まで考えていたら、人間は何も行動できない。
そのように考えて、王守仁は「知行合一」を主張しました。
学んだら即行動せよ、という教えです。
――『哲学と宗教全史』より

「知行合一」とは、知ることと行うことは本来一つであるという考え方だ。
 頭で理解するだけで終わるのではなく、実際の行動に移してこそ、本当に知ったことになると王守仁は考えた。

 実際に動いてみることで、頭の中だけでは見えなかったことに気づき、理解が深まっていく。

 もちろん、何も考えずに行動すればいいという意味ではない。
 だが、失敗しない方法を探し、あらゆる可能性を考え続けていたら、いつまでも最初の一歩を踏み出せない。

「動いてから考える」と変わる!

 今は、何かを始める前にいくらでも情報を集められる。
 転職先の口コミを調べ、商品レビューを読み、失敗した人の体験談までわかる。
 しかし、どれだけ調べても、実際にやってみなければわからないことはたくさんある。

 損をしたくない、失敗したくないと思うほど、動かないことがいちばん安全に思えてくる。

 王守仁の「知行合一」という考え方は、考えてばかりで動けなくなったとき、実際に行動し、その中で学んでいくという視点を与えてくれる。