真面目で、責任感が強く、周囲からの評価も決して低くないのに、なぜか思うように伸びない人がいます。その原因は、能力や努力不足ではなく、本人が「長所」だと思っている真面目さにあるのかもしれません。完璧な計画にこだわり動き出せなかったり、自分に厳しすぎて、新しい挑戦をためらってしまったり――。本稿では、世界のトップ層を見てきたエゴンゼンダーのパートナー・元日本代表でスタンフォード大学客員研究員の丸山泰史氏による新刊『「考えてばかりで動けない」がなくなる真面目の縛りを解く方法』から優秀なのに「真面目の罠」にハマって空回りしている人の事例を抜粋・編集して紹介します。(構成/ダイヤモンド社・井上敬子)

仕事ができるのに「なぜか伸びない人」に共通する、意外な落とし穴Photo: Adobe Stock

「完璧な計画」が初動を遅らせるAさん(20代男性)

 Aさんは、上司が後ろを通るたびに姿勢を正すほど真面目で、周囲から期待されている若手です。しかし「完璧な計画」を求めるあまり、がんじがらめになっていました。

 上司から「ちょっと面白いアイデアを考えてみて」と気軽に投げられても、Aさんの頭の中では「リサーチに3日、競合分析に5日……」と完璧な段取りのシミュレーションが始まります。

 アイデアを練り上げるために膨大な時間を要し、上司がしびれを切らした頃に出てくるのは、ガチガチに作り込まれた「大作」です。

 しかし、一人で時間をかけたものほど上司の意図とズレていることはよくあります。上司は「早めに相談してほしかった」と落胆し、Aさんは「全否定された」と徒労感に苛まれる。真面目すぎるがゆえに、大きなエネルギーロスが発生していました。「慎重な準備」という過剰なブレーキが、彼からチャンスを遠ざけていたのです。

自己評価の厳しさが挑戦を阻むBさん(30代男性)

 仕事で華々しい成果を上げ、良き夫・父親でもあるBさんは、一見すると非の打ち所がない「勝ち組」です。

 それなのに、心の中は「自分はダメな人間だ」という感覚が溢れています。その背景には「第1志望の大学に行けなかった」という過去の挫折があり、仕事で成果を出しても、「できていないこと」ばかりに目がいって、自己評価はいつも赤点ギリギリです。

 自分の長所を聞かれても言葉に詰まる一方、短所を聞かれれば申し訳なさそうに際限なくあふれ出してきます。

 全方位で満点を取らなければいけないという真面目さが「今ですら仕事も家庭も中途半端なのに、これ以上の挑戦は減点される場所が増えるだけ」という恐れにつながり、十分にこなせるはずの昇進や新しい機会を「そんなの無理です」と固辞し、自ら可能性を狭めてしまいます。

 さらに、この厳しさは他者へも向けられます。

「自分はこんなに自らを追い込んでいるのに、なぜあの人はあのレベルで平然としていられるのか」という苛立ちがBさんを常に支配し、チームにもネガティブな雰囲気を生み出していました。

 この2人の例のように、真面目で、責任感が強く、周囲からの評価も決して低くないのにもかかわらず、思うように伸びない上に、意図せずして周囲にまでネガティブな影響を巻き起こす例は意外とあるケースなのです。