仕事でAIを使うことが当たり前になった今、ビジネスパーソンたちの迷いはむしろ増えています。「AIがあるなら、ビジネススキルなんていらないのでは?」「自分で頑張るより、AIに頼った方が早いのでは?」……。一方で、AIに任せっきりで、ビジネスパーソンとしての能力が退化するのは怖い。では、AI時代のビジネスパーソンにとっての「成長」とは何なのでしょうか。
そこで、AIを使った思考術をまとめ、全680ページ、2700円のいわゆる“鈍器本”ながら話題となっている書籍『AIを使って考えるための全技術』著者の石井力重さんと、監修者の加藤昌治さんに、「AI時代に必要とされる能力」についてお聞きしました。(構成/ダイヤモンド社・石井一穂)

「成長したい」と言うくせに「なんでもAIで答えを出す人」が見落としている“大事なこと”Photo: Adobe Stock

AIで浮いた時間を「思考」に使える人だけが伸びる

――AI時代にビジネスパーソンにとっての「成長」とは?

加藤昌治(以下、加藤) プロンプトの書き方、といったAIの具体的な使い方もあるでしょうけれど、大事なのはAIを「何に使うか」「どう使うか」っていう話じゃないでしょうか。

 大前提として、AIを使うことであらゆる作業時間は短くなると思うんです。でも浮いた時間をそのまま休みにしちゃうのなら、もったいないですよね。

 たとえば作業の結果を他の人に説明する練習に時間を使うとか、考えた過程を文章化してみるとか。

――算数のプリントで掛け算の順番を間違えて不正解になった答案がSNSでよく話題になったりしますけど、意外とああいうことがこれからは大事になってくるんですかね。アウトプットだけあっていればいいんじゃなくて、ちゃんと考え方まであっているかどうかが大事になってくる。

企業は“結果”ではなく“過程”を評価している

加藤 知己の新聞記者から、企業が考える人材育成について聞いたことがあります。

 たとえば博士号を持つ人を積極的に採用しているけれど、必ずしも大学院で学んだ内容と関係のある仕事をアサインするわけでもない。

 しかし大学院の博士課程まで行っているということは「物の突き詰め方を知っている人」であると。ゆえに対象は違えども、突き詰め方は一緒だろうと評価してのことらしい。

石井力重(以下、石井) 知的忍耐力というか、発狂しないで同じことを何十時間もやれる人たちですからね。

加藤 大事なのは「what to do」だけじゃなくて「how to do」なんですかね。

 大学院で物事の突き詰め方を勉強したこと、AIでこういうプロセスで答えに到達しましたと語れること。

 要は「過程を作れる人」が企業は欲しいということでしょうか。そこには再現性がありますから。

AI時代は「結果を出せる人」ではなく「過程を知っている人」が評価される

加藤 たとえ新人社員であっても、過程を考え抜いて、結果、自分なりの答えと過程とをセットで上司に提示できるようになることが、AI時代の「成長の証明」と言えるかも。

 すでに石井さんと議論しましたが、上司の側も成果だけでなく過程も評価して、それに対するフィードバックもしましょうねと。

石井 その過程を考えられるようになるためにも、1年目とかの若手だったら、やっぱりどんな業務もまずは自力でやってみた方がいいですよね。

 一見すると無駄なんですけど、トータルで見たら絶対そっちの方が早いですから。

 1回は、超アナログでやってみる。
 そこから、自分なりにプロセスを考えてみる
 そしてAIで実行した結果と一緒に、プロセスも提示する。

 それが成長であり、上司と良い関係性を作ることにもつながると思うんですよね。

(本稿は、書籍『AIを使って考えるための全技術』著者の石井力重さんと、監修者の加藤昌治さんによる対談をもとに作成したオリジナル記事です。

石井力重(いしい・りきえ)
アイデアプラント代表。早稲田大学 非常勤講師(デザイン論)。日本創造学会 元理事およびデジタル推進委員会 委員長。東北大学大学院修了後(理学修士)、ハイテク専門商社に5年勤務。同大2つの大学院(工学、経済学)博士後期課程にて創造工学を研究後に退学。新エネルギー・産業技術総合開発機構のNEDOフェローとして大学発ベンチャーに3年駐在。2009年にアイデアプラント設立。創造工学の研究、ブレインストーミング・ツールの開発、アイデアソンのデザインとファシリテーション、創造研修などをしている。研修を実施した企業、教育機関はこれまでに600以上で、のべ2万人以上が参加。実施企業は、グーグル、マイクロソフト、NTTドコモ、富士通、KDDIなど。
加藤昌治(かとう・まさはる)
1994年広告会社入社。情報環境の改善を通じてクライアントのブランド価値を高めることをミッションとし、マーケティングとマネジメントの両面から課題解決を実現する情報戦略・企画の立案、実施を担当。著書に『考具』『チームで考える「アイデア会議」 考具 応用編』『アイデアはどこからやってくるのか 考具 基礎編』(すべてCEメディアハウス)、『仕事人生あんちょこ辞典』(角田陽一郎氏との共著、KKベストセラーズ)など、ナビゲーターを務めた書籍に『アイデア・バイブル』(ダイヤモンド社)がある。