ノーベル賞の登竜門・ラスカー賞受賞で話題! 睡眠学の世界的権威・柳沢正史教授が、最新研究をもとにやさしく解説した著書『世界最高の睡眠学が教える 睡眠の正解』が話題です。巷にあふれる睡眠の常識・思い込みの真偽を解き明かしつつ、「眠れない」「起きられない」「寝ても疲れがとれない」といった悩みの解消法を提唱します。あなたが本来の自分を取り戻し、よりよい明日を迎える睡眠のヒントをお届けします。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局・中村直子)

「横になっているだけでも休まる」は大きな誤解!睡眠学者・柳沢正史が「眠れないならベッドから出て」と言うワケPhoto: Adobe Stock

「横になっているだけでも休まる」はうそ

 眠れない夜に、こんな慰めを聞くことがあります。

「眠れなくても大丈夫。横になっているだけでも休まるから」

 気持ちはわかります。たしかに、立っているより座っているほうが楽ですし、座っているより横になっているほうが、体の力は抜けます。筋肉もゆるみますし、肉体的な疲労は多少やわらぐでしょう。でも、それをそのまま眠ったのと同じと考えるのは間違いです。

 横になっているだけでは、眠ったことにはなりません。そして、眠っていない以上、脳は十分には休めていません。

 ここで大事なのが、“睡眠欲求”という考え方です。

 睡眠欲求とは、起きているあいだに少しずつたまっていく、眠りたい圧力のようなものです。朝起きてから夜に向かうにつれて強くなり、実際に眠ることで弱まっていく。

 つまり、この睡眠欲求は、眠らなければ減りません。目を閉じて横になっていても、眠っていないなら、脳にたまった眠気の借りは返せないのです。

無意識に眠っている場合は大丈夫

 本人は「ぜんぜん眠れなかった」と思っていても、横になっているうちに、実際にはうとうとと眠っていることがあります。そうであれば、もちろん話は別です。その場合はちゃんと眠れているので、ある程度は休まったといえます。

 問題は、本当に眠れないのに、毎晩長い時間ベッドで悶々と過ごしてしまうことです。

 これは、睡眠学的に見ると、かなりよくありません。なぜなら、ベッドや寝室が“眠る場所”ではなく、“眠れずに苦しむ場所”として脳に記憶されてしまうからです。

 この条件づけが起きると、はじめはたまに眠れなかっただけなのに、やがてベッドに入ること自体が緊張や不安を呼び起こすようになります。

 眠くなっていたはずなのに、ベッドに入った途端に目が冴える。これは不眠症の人によく起こる、とても典型的な悪循環です。

 では、眠れない夜はどうすればいいのか。答えはシンプルです。

 眠れないなら、ベッドから出てください――。

 リビングに戻り、薄暗い部屋でリラックスできることをする。脳を刺激しない、受け身で見られる動画でも、静かな音楽でも構いません。

 そして本当に眠くなったと感じたら、もう一度ベッドへ戻る。このとき、睡眠時間が30分や1時間削られることを気にしないでください。ベッドで悶々と過ごすことより、眠くなってからベッドに入ることのほうがずっと価値があります。

「ベッドは眠る場所だ」と、脳に学習させることが大切です。眠れない夜は、あせらずベッドを出る。それだけで、不眠の悪循環を断ち切る第一歩になります。