2026年の為替介入額の合計

28年ぶりの円買い協調介入、円安の主因はマクロ経済政策、問われる政府・日銀の転換

 為替介入は新たな局面に入った。2026年4月末から5月初めに円買い介入が実施されたが、円安の流れは止まらず、ドル円レートは一時1ドル=164円近傍と、約40年ぶりの円安水準を記録した。こうした状況の中、日米の通貨当局は7月末に約28年ぶりの円買い協調介入に踏み切った。26年の円買い介入額は約24兆円と推計され、歴史的にも大規模だ。

 過去の協調介入は、金融危機や災害などを背景に、為替レートが急変した局面で実施されることが多かった。例えば1998年の円買い協調介入は、アジア通貨危機と国内金融システム不安の下で進んだ円の急落に対する対応であった。

 だが今回の協調介入の前には、大きなショックは生じていない。イラン情勢の緊迫化に伴う原油高が、円安圧力を強めた面は確かにあるものの、それ以前から為替レートは円安基調にあった。

 足元の円安には、一時的な急変をもたらすショックというより、マクロ経済政策が一因として作用しているとみている。日本銀行公表の消費者物価指数(除く生鮮食品、特殊要因)は26年6月に前年比+2.7%を記録する一方、政策金利の誘導目標は1.00%で、実質金利はマイナス圏にある。金融政策によって物価上昇圧力を十分に抑えるには至っておらず、円には減価圧力がかかりやすい。

 加えて、高市政権が積極財政の姿勢を明確化したことも円安に拍車をかけたとみられる。歳出と歳入のバランスを確保せずに大規模な歳出が実施されるとの懸念が強まれば、インフレへの警戒も一段と高まる。金融引き締めペースが緩やかな状況では、こうした警戒が円安をさらに進行させる。

 このように考えると、円安是正には、協調介入よりも、マクロ経済政策の転換が重要になる。日銀は利上げペースを速めることで、基調的な物価上昇率が目標を上振れるリスクを抑制できる。協調介入に踏み切った以上、政府も日銀の利上げを容認する姿勢を示すことになるだろう。

 より長期的には、財政政策運営が鍵を握る。積極財政を進めるにしても、歳出と歳入のバランスを確保することが、円安圧力を抑える上で重要だ。協調介入を契機に、政府・日銀の政策スタンスがどう変化するのか注目したい。

(国際通貨研究所 上席研究員 久後翔太郎)