ワシントンで記者団の取材に応じるベセント米財務長官 Photo:EPA=JIJI
円安抑止の為替介入で、米国が日本との協調に踏み切った。この歴史的なイベントを受け、市場の内外で、米国は高市政策に駄目出しした、日本銀行の利上げの遅れが危機を招く、貴重な外貨準備からの差益を減税の財源にするなどもっての外などなど、興味深いナラティブ(物語)が噴出した。日米協調介入を題材に、為替変動の原理、為替介入の効能、円安の良い面・悪い面を整理し、相場に臨むバランス感覚を正したい。(楽天証券グローバルマクロ・アドバイザー TTR代表 田中泰輔)
円安をもたらす
「4つの根本要因」
ここ数年、4つの強力な円安作用が続いている。
第1は、脱デフレによって発現する金融緩和効果である。デフレ下では、異次元の金融緩和をもってしても、国内マネーは動かなかった。金融緩和効果とは、消費や投資にマネーが動き出すことに他ならない。インフレになると、キャッシュを滞留させたままでは目減りする。国内マネーが動き出し、相対的に高いパフォーマンスの海外資産へ向かうことで、円安を促している。
第2は、相対的に高止まりする米国など海外主要国の金利である。為替相場の短中期変動は内外金利差に沿うところが大きい。コロナ禍後に世界的に上伸したインフレが沈静しかかっても、地政学問題による原油高を含め、インフレの火種がくすぶり続けている。
第3は、相対的に低いままである日本の金利だ。日本銀行が脱デフレに見合う利上げを慎重に進めている。インフレに対して後手に回り、実質金利は今でもマイナスである。30年にわたる日本の超低金利は、世界に円キャリー取引を根付かせ、世界どこでも買う資産があるなら、円を調達して売ることが定番となっている。
第4は、日本の国際収支構造の変化が、中長期的な円安の底流をもたらしている。経済発展段階上、そして、デジタル経済の進展上、日本の貿易・サービス収支は赤字になりやすくなっている。経常収支は黒字を計上し続ける段階ながら、その黒字の多くが国内還流(円買い)にならず、十分な円高作用を持たない。加えて、新NISA(少額投資非課税制度)など、動意づいた国内マネーが対外投資に向かいやすくする制度の後押しも効いている。
次ページでは、今回の日米協調介入の効果、米国の金融当局の意図、円安をどう捉えるべきかについて論じる。







