7月31日の為替介入について記者からの質問に答える片山さつき財務大臣 Photo:JIJI
7月末の日米協調介入などを受け、ドル円相場は一時1ドル=155円台まで円高が進んだものの、早くも159円前後まで押し戻された。2024年の為替介入と比べて効果が長続きしないのは、FRBの金融政策の方向性の違いが影響している。今後のFRBと日本銀行の金融政策、日本の財政不安を検証すると、再び160円を突破する懸念は拭えない。(ダイヤモンド編集部編集委員 竹田孝洋)
日米協調円買い介入でも効果は半減
24年とは違う「円安ファンダメンタルズ」
日米協調介入の効果は、あっという間に半減してしまった。
日本銀行の金融政策決定会合1日目の7月30日、日本の金融当局は大規模なドル売り・円買い介入に踏み切った。翌31日には米国も円買い介入に参加し、日本も再び介入した。1998年6月以来となる日米協調介入である。米国の介入は、ドルではなくユーロを売って円を買うという異例の手法が取られた。
介入を受け、円の対ドルレートは介入前の1ドル=164円に迫る水準から、8月3日には一時155円台まで急激に円高に振れた(下図参照)。
しかし、その後はじりじりと円安が進み、8月13日時点では159円台まで押し戻された。介入による円の上昇幅のほぼ半分を失った格好だ。
日本の金融当局は今年4月30日、5月上旬にも円買い介入を実施しており、このときの介入額は計11兆7349億円だった。
そして7月30日、7月31日、3日の介入の合計額は12兆円前後と推計されている。2回の介入額を合わせると23兆円を超える。こうした巨額の円買いにもかかわらず、為替レートは再び160円に近づいている。
2024年にも日本の金融当局は円買い介入に踏み切った。4月29日と5月1日の2回で計9兆7885億円、7月11日と12日の2回で計5兆5348億円を投じた。
このときは、結果として1ドル=160円前後から140円前後まで円高が進み、その後150円前後まで戻すのは約3カ月後の10月、再び160円を突破するのは2026年6月まで待つことになった。その意味では、24年の介入の効果は今回よりはるかに長く持続した。
なぜ違うのか。
24年と今回では、円相場を取り巻く金融政策の環境が大きく異なるからだ。24年の介入当時、実際にFRB(米連邦準備制度理事会)が利下げに転じたのは9月だったものの、市場ではすでに金融政策が利下げ方向へ転換するとの観測が強まっていた。
一方、今回は事情が違う。
FRBは7月29日のFOMC(米連邦公開市場委員会)で政策金利を3.50~3.75%に据え置いたものの、3人の委員が0.25%の利上げを主張して反対票を投じた。少なくとも金融政策の方向が明確に利下げへ向かっているとはいえない。
日銀が追加利上げを志向している点は24年と共通するが、政治環境が異なる。岸田政権下の24年と比べ、高市政権は急速な利上げには慎重な姿勢を示していると市場では受け止められてきた。
つまり24年は、FRBの利下げと日銀の利上げによって日米金利差が縮小していく方向性が比較的明確だった。今回はFRBに利上げの可能性が残るため、日米金利差が持続的に縮小するとは限らない。
こうした金融政策の方向性の違いが、24年に比べて円安圧力を強くし、介入後の円の早期反落につながっていると考えられる。
大幅な円高が見込みにくいとなれば、輸入企業なども将来必要になるドルを早めに手当てしようとする。その意味では、実需面からも円安圧力がかかりやすくなる。
為替介入についてよくいわれるように、介入は相場の急変を抑え、金融政策などが効果を発揮するまでの「時間を稼ぐ」ことはできる。
しかし、ファンダメンタルズが示す為替相場の方向そのものを長期にわたって反転させることは難しい。介入の方向とファンダメンタルズが逆向きならば、その効果は長続きしにくい。
次ページでは日米の金融政策と金利動向を検証し、円の対ドルレートの先行きを予測する。








