みなさんは、美術館をどう周っていますか? はじめは作品をじっくり観るけど、最後になるにつれて疲れてきてしまったという経験がある人も多いと思います。本記事では、『「いまを生きる力」を取り戻す 感性の教室』の著者・末永幸歩氏に、美術館が100倍楽しくなる周り方についてお話しいただきました。
写真:末永幸歩氏
美術館が100倍楽しくなる周り方
――ただいま、大阪の中之島美術館で「フェルメール展」が開催されています。せっかく観るならじっくり楽しみたいという人も多いと思うのですが、末永さんなりのおすすめの美術館の周り方はありますか?
末永幸歩氏(以下、末永):私が自信を持ってお勧めするベスト1の方法は、「スマートフォンをロッカーに預け、紙と一本の鉛筆を持つこと」です。
――え! スマホをロッカーに預けてしまうんですか? 本物を見たからには、写真も撮りたくなります。
末永:そうですよね(笑)。
でも、美術館では、私たちは無意識に3つの行為を同時にやろうとしてしまいます。
それは、「撮影」「情報収集」「鑑賞」です。
撮影でいうと、美術館という人混みの中で、スマホで斜めから反射を気にしながら撮った写真より、公式サイトからダウンロードできる画像の方が遥かに綺麗です。
また、情報収集でいうと、人混みの中で解説を読んだりスマホで画家の歴史的背景を検索したりするより、家に帰ってからじっくり調べた方がよっぽど効率的ですよね。
つまり、撮影や情報収集は、美術館の外でいくらでも代替できるんです。
――確かに、言われてみればその通りですね。
末永:美術館という「その空間、その本物の絵の前」でしかできない唯一の行為は、「目の前にある作品から、自分だけの感覚を受け取る」ということだけなんです。
スマホを持っていると、自分の脳が「感じ取る」ことを始める前に、カメラを向けたり検索したりして、思考停止のショートカットを使ってしまいます。
だからこそ、その誘惑を断ち切るために、あらかじめスマホをロッカーに預けてしまうのが、最も効果的なアプローチなんです。
持つのは「紙と鉛筆」だけ
――スマホを預ける代わりに持つのが、「紙と一本の鉛筆」なんですね。
末永:はい。これがないと、大人の集中力は5分も持ちません。
ただ絵の前にボーッと突っ立っているだけでは、頭の中が今日の晩御飯のメニューや、仕事のタスクのことでいっぱいになって、すぐに飽きてしまいます。
だから、脳に「心地よい負荷」をかけ続けるために、目の前の絵から見つけたこと、感じたことを、紙にどんどん書き出すんです。
――シャープペンやボールペンではなく、「鉛筆」というのにも理由があるのでしょうか?
末永:実は、万が一インクが飛んで作品や壁を汚してしまうのを防ぐため、世界のほとんどの美術館ではボールペンや万年筆の使用が禁止されています。
でも、鉛筆や色鉛筆なら使用を許可されていることが多いんです。
だから、鉛筆を持参するのは、本物の美術ファンの鑑賞マナーでもあります。



