スズキ「ジェンマ」――。その名前を聞いてピンとくる人も多いだろう。1960年代に一世を風靡したイタリア製西部劇、マカロニウエスタンで活躍したジュリアーノ・ジェンマをキャラクターに起用し、80年代に発売された50CCスクーターである。そのジェンマが20年ぶりに復活した。

 ただ、今月スズキが発売した新型ジェンマの排気量は250CC、いわゆるビッグスクーターと呼ばれるもので、このタイプではスズキにとってスカイウェイブ以来10年ぶりの新車である。最大の特徴は「二人乗りを前提としたデザインで、日本限定の商品」(津田紘・スズキ社長)というところだ。

 そもそも国内で二輪を取り巻く環境は大変厳しい。98年までは100万台以上あった年間販売台数は減少の一途。2006年には道路交通法の改正により駐車違反の取り締まりが強化され、これまであまり取り締まりの対象とならなかった二輪も四輪並みに厳しくなった。これが大打撃となり、昨年はついに70万台を割った。「(法改正以降)新車販売が2割以上減った」と関係者はため息を漏らす。

 じつは二輪の免許取得者数が2000万人に対して、保有台数は350万台と低い。そこでターゲットとなったのが経済的に余裕のあるシニア層だ。

 近年二輪ユーザーは高齢化し、いまや過半数が40代以上。結婚を機に二輪を手放したが、子育てが一段落して再び二輪に乗る「リターンライダー」や、若いときには手が出なかったが、趣味に費やすおカネができて乗り始める「遅咲きライダー」が増えている。

 ただし、「妻と乗る」「子どもを乗せる」といった具合に、歳相応に二輪の楽しみ方も変化している。二人乗り仕様というのも、この層ならではのニーズに応えたものだ。

 初代ジェンマが20年の時を経て大きく変わったように、当時二輪好きだった若者もいまやすっかりシニア層。懐かしさと斬新さははたして彼らに受け入れられるだろうか。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 柳澤里佳)