完璧を目指すほど、かえって成果から遠ざかる――。世界のトッププレイヤーは、最初から100点を狙わず、70点で動き、試行錯誤の回数を増やしています。本稿では、世界のトップ層を見てきたエゴンゼンダーのパートナー・元日本代表でスタンフォード大学客員研究員の丸山泰史氏による新刊『「考えてばかりで動けない」がなくなる真面目の縛りを解く方法』から一部を抜粋・編集し、シリコンバレー流「戦略的いいかげん」の思考法を紹介します。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局 井上敬子)

「最初から完璧なホームランは狙わない」シリコンバレー流“戦略的いいかげん”のロジックPhoto: Adobe Stock

どんなに緻密に練り上げた計画も、一発目が的中することはほぼない

 ここで、真面目な人が陥る「完璧主義」と、世界のトッププレイヤーが実践する「戦略的いいかげん」の間に横たわる、残酷なまでの「勝率の差」をロジカルに解き明かしましょう。

 真面目な人は、100点満点の完璧な計画を立てようとするあまり、準備にすべての時間とエネルギーを使い果たし、ビジネスの現場において「1回しか打席に立てない」という極限状態に自らを追い込みます。

 しかも、どれだけ緻密に練り上げた計画であっても、不確実な現代において一発目が100%的中することなどあり得ません。

 結果として、虎の子の1打席目を外した瞬間、彼らは「全否定された」と絶望し、再起不能状態に陥ってしまいます。

 一方で、戦略的いいかげんさを武器にするリーダーたちは、最初からホームランを狙っていません。彼らが信じているのは「打席の数と確率のロジック」です。

 彼らは、30点の未完成なラフ案や、70点の不完全なアイデアを「いいかげんな実験」として、まずは市場や上司に向けてサクッと投げ込みます。

 100点を目指して抱え込まないからこそ、彼らは真面目な人が悩んでいる間に、平然と「10回先んじて打席に立つ」ことができるのです。

 当然、最初の数回は空振りに終わるかもしれません。

 しかし、彼らにとってその空振りは失敗ではなく、「このコースは当たらない」「この切り口は上司のニーズとズレている」という、生きた一次データの獲得を意味します。

 10回打席に立ち、微修正を繰り返しながら現場のリアルなデータを集め続ければ、確率論的に、6回目、7回目にはスタンドに叩き込む特大のホームラン(大成果)を生み出す可能性が確実に高まる。

 つまり、「最初から100点を目指して1回しか振らない人」と、「いいかげん(良い加減)な実験を繰り返して10回振る人」では、最終的に手にする成果のクオリティに、文字通り天と地ほどの圧倒的な差がつくということです。

 プロセスにおいて「“いいかげんに”動くこと」は、決して仕事をサボる不誠実な行為などではありません。むしろ、打席の数を最大化し、最も確実に、最短ルートで最高の結果をつかみ取るための「極めて合理的で冷徹な戦略」なのです。

「最初から、机の上のアイデアが一発で世界に当たるわけがない」。その冷めた前提に立っているからこそ、あえて最初から70点程度の「遊びの余白」を作って、現場の小さな失敗を歓迎する。

 この「大きな事故を起こさない安全な実験場」をシステムとして担保しているからこそ、彼らは過剰なブレーキを外してアクセルを全開にし、己の内に眠る爆発的なポテンシャルを120%解放することができるのです。

人生を「ゲーミフィケーション」する

 こうしたシリコンバレーの起業家たちが共通して持っているOSをひもとくと、そこには「ゲーミフィケーション」という一貫した哲学が見えてきます。

 ゲームの世界では、敵にやられても「次は装備を変えよう」「攻略法を練り直そう」と、失敗すら楽しみながら大きなゴール(「姫の救出」や「宝の獲得」)を目指します。

 シリコンバレーの起業家も同様に、ビジネスや人生を一つの壮大なゲームと捉え、日々の取り組みを「試行できるサイズ感」に細かく刻みます。

「平気だった」「うまくいった」「これは楽しい」

 そうした小さなフィードバックを糧に、プロセスそのものを「攻略」に変えていく。

 この軽やかなフットワークこそが、真面目の縛りを解き、とんでもない成果を成し遂げるための原動力となるのです。