真面目に働いている。空気も読む。頼まれた仕事はきっちりこなす。それなのに、なぜかパッとしない――。もし思い当たるなら、足りないのは「努力」ではないのかもしれない。むしろ、これまで武器だと思ってきた「真面目さ」が、あなたの力にブレーキをかけている可能性があるのです。本連載では、世界のトップ層を見てきたエゴンゼンダーのパートナー・元日本代表でスタンフォード大学客員研究員の丸山泰史氏による新刊『「考えてばかりで動けない」がなくなる真面目の縛りを解く方法』から、抜粋・編集して「真面目の縛り」を解き、「突き抜ける人」になるためのヒントをお届けしていきます。(構成/ダイヤモンド社・井上敬子)

「グサッとくる…」真面目に頑張ってきた人ほど仕事で行き詰まる意外なワケPhoto: Adobe Stock

「真面目さ」だけではネガティブな結果につながることもある

 毎日、仕事はきちんとこなしているし、そこそこ評価もされている。
 失敗しないようにしっかり準備をしたり緻密な計画を立てたり、会議では空気を読んで波風を立てないようにしたりしている。

「自分には特別な才能はないかもしれないけど、せめて真面目に頑張ろう」
 そうやっていつもコツコツ努力してきたのに、なぜかパッとしない。
 毎日がただ息苦しくて、仕事も人生もちっとも面白みがない……。

 もし今、あなたがそんな「行き詰まり」を感じているなら、お伝えしたいことがあります。あなたの能力の発揮を妨げているのは、才能のなさではありません。
 本来は美徳であるはずの「真面目さ」が、いつの間にかあなた自身を縛り、苦しめている可能性があるのです。

マッキンゼー・グローバル研修での強烈な「挫折経験」

 私がそう感じるようになったそもそものきっかけは、自身の強烈な挫折経験にあります。

 東大の大学院を修了し、マッキンゼーに入社して2年目、シンガポールでのグローバル研修に参加したときのことです。

 私は元来、真面目な性格で、周囲の期待に応えようと必死に努力するタイプです。

 そのグローバル研修のときも、初対面の外国人が激しく議論を交わす中で「正解を言わなければいけない」「バカな発言をしてはいけない」と過剰に気負い、完全に萎縮してほぼ一言も発言できませんでした。

 そして1週間の研修の最後、スペイン人の同僚から冷徹にこう宣告されたのです。
「お前はこの1週間、全く貢献していない。だから、お前にはフィードバックする言葉もない」と。

 それまで、「真面目街道」をひた走ってきた私にとって、それは積み上げてきたものがガラガラと崩れ落ちるような底知れぬ恐怖でした。

「正解のない世界」での戦い方の指針を知るために

 振り返ってみれば、マッキンゼーのグローバル研修で、大きなショックを受けたあの日、私にとって一番辛かったのは「正解のない世界での戦い方や、どう動いたらいいかの指針が自分の中に全くなかったこと」でした。

 与えられた課題に100点満点で答えるような「偏差値的な真面目さ」だけでは、未知の領域では通用しない。その痛烈な事実を突きつけられたとき、私は「自分と同じように真面目に頑張ってきた人に、自分と同じような辛い体験をしてほしくない」と強く思いました。

リーダーシップとは「主人公として生きていく能力」

 真面目な人が、真面目さという殻を破り、自分らしくのびのびと活躍するためには、一体何が必要なのだろうか。その「戦い方の指針」を探求し続けた結果、私がたどり着いたのが、「リーダーシップ」の研究でした。

 一般的にリーダーシップというと、管理職や経営者など一部の人に必要な能力だと思われるかもしれませんが、決してそうではありません。
 リーダーシップとは本来、「自分自身で目標やビジョンを定め、周囲を巻き込み、それを実現していく力」を指します。

 つまり、誰かに与えられた正解の枠組みの中で生きるのではなく、自分の人生を主体的に生きていくすべての人に必要な「主人公としての能力」なのです。

 その後、私は「エゴンゼンダー」という、経営者やリーダー支援に特化したスイスに本社があるコンサルティングファームへ転職しました。日本の多くの大企業の企業統治、社長後継計画、経営陣強化、経営者招聘の支援を行うトップファームですので、日本においてリーダーシップを探求するのにまさに最適な環境でした。

 当時年間数百人の経営者、経営幹部と面談していましたが、その中で気づいたのは、本来は美徳のはずの「真面目さ」が過剰になり、苦しんでいる方が想像以上に多いという事実だったのです。