「老後は、やっぱりお金がある人ほど幸せなのだろうか」。年金や貯蓄への不安を考えれば、お金が重要なのは間違いない。しかし、同じように限られたお金で暮らしていても、毎日を楽しめる人と、「何もできない」と感じてしまう人がいる。その違いは、資産の額だけでは説明できない。では、お金に余裕がなくても、老後を豊かに過ごせる人は何を大切にしているのだろうか。話題の書『人生は気づかぬうちにすぎるから。「自分第一」で生きるための時間術』から、そのヒントを紹介する。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

お金がなくても「老後に苦労しない」コツ・ベスト1Photo: Adobe Stock

「貯金額」だけを気にしていないか?

「年金だけで暮らしていけるだろうか」
「旅行や外食を、今までのようには楽しめなくなるかもしれない」

年齢を重ねるにつれて、お金の不安を感じる人は少なくない。

もちろん、生活に必要なお金を準備することは大切だ。住まいや医療、日々の食事まで我慢を強いられる状態を、気の持ちようだけで乗り越えられるわけではない。

ただ、老後の毎日を豊かに感じられるかどうかは、持っているお金の額だけで決まるものでもない。

遠くへ旅行に行かなくても、近所を散歩して季節の変化に気づく。高価な店に行かなくても、気の合う人とゆっくり話す。何気なくつくった食事や、好きな音楽を聴く時間が、心を満たしてくれることもある。

一方で、「お金をかけないと楽しめない」と思い込んでいると、使えるお金が減ったとき、毎日から楽しみまで失ってしまいやすい。

限られた条件のなかでも、日々を味わい、心が動く瞬間を見つけられる人は、暮らしの満足度を自分で育てていける。

平凡な日に特別な瞬間を見出す

そのヒントになるのが、次の考え方である。

 人生の一大イベントであれ、大型連休であれ、映画では、物語を展開させ、観客の感情を動かすために、こうした日を特別なシーンとして描くことが多い。
 登場人物に感情移入している観客は、これらの人生の大きなイベントが、登場人物の人生のハイライトを表していると自然に受け止める。これは、観客を導くために必要なシーンなのだ。
 だが現実の世界では、かけがえのない出来事は、平凡な日常や、予期せぬ瞬間にあるように思える。ならば、平凡な日々のなかにこそ特別な瞬間を見出そうとするほうがはるかによいのではないだろうか。
 そうした瞬間は、後から振り返って初めて特別に思えることが多い。後から特別だと振り返れるような経験を日頃から積み重ねていけば、人生は有意義なものになっていくだろう。

――『人生は気づかぬうちにすぎるから。「自分第一」で生きるための時間術』より

老後の安心をつくるのは、貯金額だけではない。

お金をかけなくても楽しめること。
身近な人との会話。
いつもの道で見つける、小さな変化。

そうした何気ない時間を「つまらない」と見過ごさず、自分にとっての特別な瞬間として受け取れる人は、環境が変わっても毎日の満足を失いにくい。

もちろん、将来に向けてお金の準備をすることは必要だ。だが同時に、今ある暮らしのなかで喜びを見つける力も、これからの人生を支える大切な資産になる。

特別な出来事を待つのではなく、今日という一日のなかにある小さな楽しみを大切にしていこう。