実際、自然写真家の山形豪さんは、ボツワナでライオンの肉を食べたことがあるらしく「ライオンは今まで食べた肉の中で一番まずかった。味はとにかく生臭くて、筋っぽかった」と語っています。

 現代人が脂質を好むのは、脂質が生存に必須過ぎて脂質を好むように進化した人類しか生き残らなかったことに起因しています。逆に言えば、進化の過程で脂質を好き嫌いしていた人間は死滅しました。

 それぐらい、脂質は圧倒的に高カロリーで「燃費が良い」のです。たとえばタンパク質は1gで4kcalしか生み出さないのに、脂質は1gで9kcalも生み出せます。また脂溶性ビタミン(ADEK)は脂質と一緒でないと体に吸収されません。脂質ゼロだと、これらのビタミンが吸収出来ず欠乏症になります。

なぜ草や果実を食べる動物の方が
お肉が美味しくなるのか

 また、肉質は、その動物が何を食べて育ったかにも大きく影響されます。肉食動物は、餌である草食動物に含まれる尿素や、腐敗した肉で合成される化学物質を体内に溜め込むことになります。また、草食動物は、植物細胞のセルロース・炭水化物・糖質を盲腸でアミノ酸等に作り変えて身体を作るのに対し、肉食動物は、動物細胞のたんぱく質をアミノ酸に分解して作り変えて身体を作っています。

 この過程で肉食動物の体内には、分解産物である「アンモニア」が多く発生しているのです。これら2つの要因から、肉食動物の肉は、アンモニア臭が強く、風味が悪くなります。そういう風味が、いわゆる獣臭さにつながるわけですね。

 実際、とある地域のクマを食べたことがある人によると、秋よりも春のクマの方が美味しいとのことです。これは、作物の実りある春の熊はベリーを多く食べるのに対し、秋の熊は魚を多く食べるためだとされています。

 では、なぜ草や果実を食べる動物の方が、お肉が美味しくなるのでしょう。

 別に、草を食べれば何でも美味しくなるわけではありません。現代は、餌によって肉の風味をコントロールしているから美味しいのです。たとえば、イベリコ豚という豚はどんぐりを食べて育ちます。どんぐりにはオレイン酸という脂肪酸が含まれており、これを餌とするイベリコ豚もオレイン酸の含有量が多くなります。オレイン酸はオリーブオイルなどに多く含まれる旨みであり、これを生物濃縮して美味しいイベリコ豚をデザインしているのです。