オースティン・クロトーさん(38)がフェリーへの乗船を待っていたとき、エーゲ海は穏やかそうに見えた。クロトーさんは夫と4人の子どもを連れて、ギリシャのシロス島からアテネへ向かう途中だった。船が港を出て数分後、巨大な波が船体に打ちつけ、船は激しく揺れ始めた。乗務員たちが乗客の対応に駆け回るなか、船が窓の高さまで波にのみ込まれるのが見えた。「乗務員があちこちで人をあおいだり、エチケット袋を配り回ったりしていた」とクロトーさんは話す。「トイレに行こうとするのも無意味な状態だった」前夜のパーティーで二日酔いになっている乗客が半数はいるように見えたと言う。クロトーさんが周りを見渡すと、青ざめた顔を両手で抱えながら嘔吐(おうと)をこらえている人々の姿があった。