しかし孫氏は、トップリーダーが未来を言葉にし、「声」に乗せて届けなければ、仲間も資金も、そしてチャンスも集まらないということをわかっていたのでしょう。

 同じ言葉であっても、トップリーダーが語るのか、現場スタッフが語るのかでは、言葉の重みが異なります。ビジョンを示し、判断基準を定め、組織全体に影響を及ぼせるのは、やはりトップリーダーだけ。

 だからこそ、話す力はトップリーダーに不可欠の資質なのです。

話す内容は同じでも
「声」で印象は変わる

 ある経営者にスピーチ指導をしていたときのこと。

「我が社の来期の目標は、えー、材料費を3%安くして、人手不足を解消して、えー、そうすることで、えっと、売り上げを10%伸ばしたいんです……(ボソボソ)」

 このように、今後の目標を語ってくれましたが、私にはまるで伝わってきませんでした。最初は「私の知らない業界の話だからか?」とも考えましたが、原因は別のところにありました。

 話の内容ではなく、それを相手に届ける際の「声」と「話し方」に問題があったのです。

 一般に、人は相手の言葉を理解するよりも早く、相手の外見や声といった第一印象で相手を判断します。人が相手を「信頼できるか」「有能か」を判断するのにかかる時間は、わずか0.1~0.2秒。それは、見た目だけでなく、「声」においても同様だということが、近年の研究(*注4)で明らかになりました。

 たとえば、グラスゴー大学の研究(*注5)では、人間はわずか0.4秒程度「ハロー」などの短い挨拶を聞いただけで、その人の信頼性や支配性(リーダーシップ)を直感的に判断しているということがわかっています。

*注4 Willis,J.,&Todorov,A.(2006).First impressions:Making up your mind after a 100-ms exposure to a face. Psychological Science, 17(7), 592-598.

*注5 McAleer,P.,Todorov,A.,&Belin,P.(2014).How do you say‘hello’?Personality impressions from brief novel voices. PLoS ONE,9(3),Article e90779.