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ソフトバンクグループ(SBG)傘下の英アームが急成長する見通しだ。エージェント型AI(人工知能)の普及でCPU(中央演算処理装置)の需要が急増する中、自社ブランドの半導体チップ事業に参入。時価総額は57兆円(6月26日現在)で、親会社のSBGやキオクシアホールディングスをを上回る。半導体メーカーになるアームの最大の焦点は、既存顧客である米エヌビディアとの競合をどう乗り越えるかだ。特集『AI産業戦争 米中覇権に呑まれる日本』の#17では、複雑なAI半導体業界の構造を読み解き、アームの勝機と課題に迫る。(ダイヤモンド編集部 村井令二)
エージェント型AIで「CPU」は爆発的成長へ
孫正義氏、アームの自社半導体に自信!
「アームの時価総額が二つの理由でどんどん上がっています」――。
ソフトバンクグループ(SBG)の孫正義会長兼社長は6月24日の株主総会で、グループ傘下の英アーム・ホールディングスへの期待が高まる理由について力を込めて説明した。
孫氏が挙げた一つ目の理由は、AIの進化だ。会話や画像を出力する「生成AI」から、AIが自律的に判断し、24時間働き続ける「エージェント型AI」の時代に突入した。
孫氏は「生成AIの時代に最も活躍したのは、グラフィック用のGPU(画像処理半導体)を得意とするエヌビディアだったが、エージェント型AIでは、AIの処理全体を制御するCPU(中央演算処理装置)が中心的な役割を果たすようになる」と指摘。そうした中で「CPUの設計技術で圧倒的な世界一であるアーム」(孫氏)にチャンスが訪れているというわけだ。
二つ目の理由は、アーム自身のビジネスモデルの変化だ。アームはこれまで、半導体メーカーに回路設計図(IPライセンス)を供与する「黒子」だったが、自らのブランドで半導体チップを開発・販売する事業に参入した。拡大するCPU市場をダイレクトに取り込む狙いで「アームが回路設計図の販売からチップ販売に進化した」(孫氏)というわけだ。
こうした期待を背景に、SBGが87%を保有するアームの時価総額は、6月18日には70兆円を超えた。26日には57兆円まで下がったが、親会社のSBGを上回り、AIブームで日本企業最大になったキオクシアホールディングスをもしのぐ規模となる。
SBG取締役でもあるアームのレネ・ハース最高経営責任者(CEO)も、CPU市場の成長に自信を示している。6月2日、台湾で開催されたコンピューター展示会「COMPUTEX(コンピューテックス)台北」に合わせて開いたイベントでこう語った。
「私は3月の時点で、データセンター用のCPUの市場規模は『2030年までに1200億ドル(約19兆円)に達する』と予想して『強気過ぎる』と言われたが、今ではその2倍以上になるとの見方が一般的だ。CPUは爆発的な成長が見込める」――。
この市場を狙い、アームは26年後半に自社ブランドの半導体チップ「AGI CPU」の量産出荷を開始する計画だ。すでに台湾TSMCで製造を開始している。
もっとも、強気の見通しの裏側で懸念もささやかれる。最大の課題は、アームが自らCPUの販売に乗り出せば、IPの大口顧客であるエヌビディアと競合する恐れがあるということだ。
次ページでは、アームを取り巻く複雑な関係構図を整理し、自社ブランドの半導体チップ参入の勝機とリスクを解き明かす。







