『風、薫る』第114回より 写真提供:NHK
今日の朝ドラ見た? 日常の話題のひとつに最適な朝ドラに関する著書を2冊出版し、毎日レビューを続けて12年めの著者による「読んだらもっと朝ドラが見たくなる」「誰かと話したくなる」連載です。本日は第114回(2026年9月3日放送)「風、薫る」レビューです。(ライター 木俣 冬)
覚えていますか、セツさんのことを
再登場したのは寛太(藤原季節)や柳生(中村倫也)だけではなかった。
第10、11週に登場した魚住セツ(村上穂乃佳)が、りん(見上愛)と直美(上坂樹里)の前に現れた。寛太の元で派出看護をしていたのだ。
セツのことを振り返っておこう。帝都医大病院に心中未遂で運び込まれた遊女で、源氏名が夕凪。本名が魚住セツ。夕凪という名は直美の母(内田慈)の源氏名と同じだったため、母となんらかの関わりがあるのではないかと直美はこころを震わせた。
同郷であったことで同じ源氏名になったという関連性はあったものの、それ以上の情報は持っていなかった。ただ、セツとの出会いによって、遊女の心情や境遇を直美が認識した。その後、直美の母は意外なところ――瑞穂屋にいたという流れになる。
同時に、りんと直美は遊郭の実態とその劣悪な環境下で働かざるを得ない女性たちの存在を目の当たりにした。
ともすれば、りんや直美だって生活のために遊郭で働かざるを得ない可能性もあった。彼女たちが看護婦という新しい職業に就くことができた背景には、本人たちの努力だけではなく、巡り合わせもあったのだろう。ちょっとした運命の分かれ道で、ずいぶんと見える風景は変わってしまうものなのだ。
りんと直美の奮闘によって遊郭を出ることができたセツ。あんなに颯爽と去っていったのに、なぜ評判のよくない派出看護婦会で働いているのか。驚くりんと直美に「なんだ。知り合いか?」と言う寛太。
寛太はあの頃、直美に頼まれて実母のことを調べたりしていたが、セツとは面識はなかったようだ。直美を介して間接的に知り合いだったふたりが偶然出会ってしまうとは縁は異なもの。







