たとえば、次のような商談です。

営業:「本日は、当社の新システムについてご紹介します。機能のA、B、Cが特におすすめでして、業界トップクラスの効率化を実現しております」

部長:「うちは今、業務効率よりも海外展開の遅れが一番の課題なんだよね……」

営業:「そうなんですね。ただ、このシステムを入れていただければ、まず社内がスリムになりますので」

部長:「海外拠点との連携や、多言語の対応は?」

営業:「えっと……そこは今後対応していければ。ただ、コスト削減効果は間違いないので、必ずご満足いただけますよ」

部長:「う~ん……」

 この営業担当者は、自社システムの強みを一生懸命伝えようとしました。しかし、相手企業が直面している最大の経営課題は「海外展開」。そこに対する理解や共感がないまま話を進めてしまったため、部長に「うちの状況をわかっていないな」という違和感を抱かせてしまいました。

「相手を知らずに話したこと」が、商談を終わらせてしまったのです。

一目置かれるリーダーは
「話す前」に準備している

 一目置かれるリーダーは、こうした失敗をしません。

 講演なら「聴衆は誰か」、商談なら「相手企業の歴史や理念、課題は何か」、対談なら「相手は何を語りたい人なのか」を事前に把握します。

 そして、前述の稲盛和夫氏流にいえば、相手のモチベーションが、自ら燃える「自燃型」なのか、きっかけがあれば動く「可燃型」なのか、あるいは関心が薄い「不燃型」なのかを見極め、言葉の選び方、切り口を変えていく(*注1)。

 話す力とは、声や表現のテクニック以前に、「相手をどれだけ理解しようとしたか」で決まります。一目置かれるリーダーは、話す前から相手の信頼を獲得するための努力をしているのです。

【相手との共通の話題を探るためのフックの一例】

出身地:私も川崎市出身ですので、地元の話にはつい親近感を覚えます。

食べ物:私は味噌ラーメンが好きで、出張先でもつい探してしまいます。

趣味:最近ゴルフを始めまして、週2回は仕事帰りに、打ちっぱなしに行っています。

学生時代:大学まで野球部に所属していましたから、東京六大学野球も甲子園大会も大好きです。

血液型:「典型的なB型ですね」とよく言われます。

共通の知人:○○さんには名古屋に転勤していた頃から大変お世話になっています。

仕事:私も事業会社に出向していましたから、現場のマネジメントのご苦労はよくわかります。

健康:最近は健康管理のために、一駅手前で降りて歩くようにしています。

読書:移動時間には、スマホではなく、なるべく本を読むようにしています。

音楽:最近、Mrs. GREEN APPLEにハマっていて、よく聴いています。

尊敬する人:歴史上の人物では坂本龍馬に憧れます。彼のように大局的な見地で物事を見られる人間になりたいと思っています。
*注1 稲盛和夫OFFICIAL SITE 「自ら燃える」(https://www.kyocera.co.jp/inamori/about/thinker/philosophy/words13.html)より