厚意には感謝を示すのが賢明だ。心からの感謝でなくてもいい。戦略的に、言葉の上で感謝を示す。「学費を出してくれてありがとう」「おかげで勉強に集中できる」。そう言っておけば、親も悪い気はしない。学費を出し続けてくれる可能性が高まる。

 これは打算的だと思うかもしれない。しかし、打算的で何が悪いのか。自分の利益を守るために、相手の機嫌を取る。それは社会で生きていく上で必要なスキルだ。嫌いな上司にもニコニコする。気に入らない取引先にも丁寧に対応する。それと同じことを、親に対してもやればいい。

親には従うふりをして
「心の中指」を立てておく

「面従腹背」という私の大好きな言葉がある。「心の中指を立てておけ」と言い換えたりもしている。表向きは従うふりをしながら、心の中では反発している状態を指す。ネガティブな意味で使われることが多いが、処世術として、心の健康を守る手段としてとても大事だと思う。

 親の言うことに表向きは従っておく。「はい、分かりました」「ありがとうございます」。しかし、心の中では自分の考えを持っている。親でも誰でも他者の価値観を内面化する必要はない。

『生まれたくなんかなかったのに』書影生まれたくなんかなかったのに』(小島和男、幻冬舎)

 表面上だけ合わせておけばいい。卒業して経済的に自立したら、自分の道を行けばいい。

 ついでに言うと、私は、大人になったら、親には敬語で話すことを勧めている。子どもの頃はタメ口で話していたかもしれないが、成人したら少し距離を置いた言葉遣いに変える。敬語を使うことで、適切な距離感が生まれる。友達のようになれなれしく話すよりも、少し距離を置いた関係のほうが、お互いに楽だったりする。敬語は、相手を尊重しているように見せながら、実は自分を守る盾にもなる。

「戦略的感謝」は、偽善ではない。自分を守るための合理的な行動だ。本当の感情を押し殺して苦しむ必要もない。表面上は従いながら、心の中では自分を保つ。そして、自立できる日が来たら、自分の人生を自分で決める。それまでの辛抱だ。