写真はイメージです Photo:Jose Luis Pelaez Inc/gettyimages
「独身のままだと老後は孤独死するよ」――結婚を勧める理由として、そんな言葉を聞くことがある。しかし、そもそも一人でいることの何が悪いのか。「孤独死」を盾に結婚を半ば押し付けるような日本社会の“常識”を、哲学者の小島和男氏が問い直す。※本稿は、哲学者の小島和男『生まれたくなんかなかったのに』(幻冬舎)の一部を抜粋・編集したものです。
結婚すれば孤独死を
避けられるのか
「結婚しないと孤独死するよ」と言われたことはないだろうか。親から、親戚から、あるいは職場の上司から。結婚を勧める常套句として、孤独死への恐怖が持ち出されることは多い。
さて、孤独死は本当に怖いものだろうか。2025年、警察庁が初めて全国的な統計(2024年分)を公表した。一人暮らしの自宅で亡くなった人は年間約7万6000人。そのうち65歳以上の高齢者が約5万8000人だった。この数字をどう見るか。
注目すべきは、孤独死した人の約7割が男性だということだ(※日本少額短期保険協会のデータでは約8割とされることもあるが、いずれにせよ男性が多数を占める)。そして、現在75歳以上の世代は、大多数が結婚していた「皆婚世代」である。つまり、孤独死している人の多くは、かつて結婚していた人たちなのだ。
配偶者に先立たれたり、離別したりして、一人になった元既婚者が、孤独死の主な当事者である。
結婚すれば孤独死を避けられる、という前提自体が怪しい。結婚しても、配偶者は先に死ぬかもしれない。離婚するかもしれない。子どもがいても、一緒に暮らすとは限らない。むしろ、結婚して家庭に閉じこもり、地域や友人とのつながりを失った人のほうが、配偶者を失った後に孤立しやすい。結婚は孤独死の特効薬ではない。
孤独死が怖いのは、死ぬときに一人でいることが怖いのか、それとも死後しばらく発見されないことが怖いのか。前者であれば、病院で死ぬ人の多くは家族に看取られるわけではないし、そもそも死ぬ瞬間に意識があるとも限らない。後者であれば、それは結婚ではなく、現状、地域のつながりや見守りサービスで対応すべき問題だ。
日本少額短期保険協会の「孤独死現状レポート」によれば、孤独死した人の死亡時の平均年齢は約62歳だ。平均寿命よりも20年以上早く亡くなっている。そして死因の6割以上が病死だ。
自殺の割合も、一般の死亡者に比べて高い。孤独死は、単に一人で死ぬことではなく、社会から孤立した人が、支援を受けられないまま亡くなることなのだ。
そう考えると、「結婚しないと孤独死するよ」という脅しは、二重に間違っている。第一に、結婚しても孤独死は避けられない。第二に、そもそも孤独は悪いことではない。
私は一人でサウナに行くのが好きだ。一人旅も好きだ。気の合う友人と過ごす時間も良いが、同じくらい一人で過ごす時間も楽しい。誰にも気を遣わず、自分のペースで、自分の好きなことをする。その自由は、人と一緒にいては得られない。







