一流企業が奪い合う「Cursor」の正体

 その大物たちの人間関係を浮き彫りにしたのが、AIコーディングサービス「カーソル(Cursor)」です。

 私はカーソルを、AIコーディングアプリの「王様」だと思っています。

 オープンAIやアンソロピックが提供するLLM(大規模言語モデル)をプラットフォームだとすれば、カーソルはその上で動くアプリケーションです。

 そして生成AIのアプリケーションの中でも、コーディングは「キラーコンテンツ中のキラーコンテンツ」です。LLMはプログラミングとの相性が非常によく、市場も大きい。

 だからオープンAIやアンソロピックのようなAI企業からすると、開発者が毎日使う場所を押さえているカーソルは極めて重要な存在になります。

 カーソルの強さは、単にAIモデルの性能が高いことではありません。

 最大の武器はUXです。

 既存のソースコードを読み込ませ、AIに指示を出しながら次々とコードを書き換えていく。この一連の操作が非常に使いやすい。

 インターネットサービスでは、この「気持ちよく使える」という差がものすごく大きいんです。

アップル・スポティファイ戦争との相似

 これは実は、AI業界で初めて起きた話ではありません。

 私が今回のニュースを見て思い出したのが、アップル(Apple)とスポティファイ(Spotify)の関係です。

 かつてアップルはiTunesという圧倒的な音楽プラットフォームを持っていました。ところがスポティファイという非常に使いやすい音楽アプリが登場し、ユーザーを急速に増やしていきます。

 スポティファイが強かった理由の1つもUXです。

 例えば再生ボタンを押してから音楽が流れるまでのラグを極限まで減らす発明。ユーザーが普段は意識しないような細かな技術を積み重ね、「使っていて気持ちいい」サービスを作った。

 その結果、プラットフォーム上の1つのアプリに過ぎなかったスポティファイが巨大な力を持ち、アップルと衝突するまでになりました。

 カーソルも同じです。

 オープンAIやアンソロピックという巨大なAIプラットフォームの上に乗っていたアプリが強くなりすぎて、逆にプラットフォーム側が無視できない存在になったわけです。