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「やらなくていい仕事」なのに、なぜか夢中になってしまう――。締め切りが迫っているのにメールを確認したり、必要以上に資料を作り込んだり、気づけば本来の目的とは関係のない仕事に時間を使っていたり。実はこうした“仕事の膨張”には、本人も気づきにくい心理が働いている。なぜ私たちは、忙しく動いているのに成果につながらない行動を、自ら選んでしまうのか。身近な仕事の場面から、その意外なメカニズムをひもとく。※本稿は、川内正直『マネジャーのための時間管理術で最高のチームをつくる方法』(翔泳社)の一部を抜粋・編集したものです。
「サボる人」と思われたくない
無意識に業務を増やす人の心理
目に見える形で仕事を「サボる」ことができる人は実は多くありません。なぜなら、サボっているのは絶対にダメだということは火を見るよりも明らかですし、天地がひっくり返っても正当化できることはないからです。
絶対にダメだとわかっている状況の中にずっとい続けられるメンタルの持ち主は、それほど多くありません。
だからこそ、目的意識を伴っていなかったとしても、まずは「アクティブ」にいろいろやろうとする。タスクを膨張させようとするのは、「サボっていると思われたくない」という人間の感情が深層にあると思います。
また、実際にプロジェクトマネジメントの領域でも、「スコープ・クリープ(Scope Creep)」という現象が研究されています。「クリープ」とは「忍び寄る」という意味で、プロジェクトのスコープ(範囲)が当初の想定から「知らず知らずのうちに広がってしまって困っていく」ことを指します。
もちろん、問題はプロジェクトやタスクの範囲を明確化できていないことに端を発するものです。ただ、知らず知らずのうちに業務が増えるのは、善意やこだわりなどの心理的・社会的バイアスから自然と肥大化してしまうからです。
ここで、無駄で非効率な仕事を増やし、生産性を悪化させてしまう4つの心理的要因を紹介しましょう。誰にでも、どの組織でも起こり得ることです。
やらなくていいことに
人は情熱を注いでしまう
(1)完璧主義――完璧に仕上げたいという欲求
「もう少し良くできるはず」「もっと丁寧にやれるはず」と、与えられたタスクを完璧に仕上げたいという善意の心により、やるべきことを自然と膨張させてしまった経験は誰にでもあるはずです。あるいは、「できないと思われたくない」「上司からつっこまれたくない」などの欲求から、過度に時間をかけすぎてしまうというのもよくある心境です。
完璧を目指すからこそ新しい価値が生まれることもありますが、求められている基準を意識せずに何でもかんでも完璧を目指そうとすると、生産性は悪化します。
(2)自己証明――自分だからできたと主張したい欲求
これも人間の自然な心理なのですが、「自分だからこそできた」「自分でこのタスクをコントロールできている」と認識することで、有能感や自律性を感じ、モチベーションが上がります。これ自体はとても素晴らしいことです。
ただ、その効力感を得るために、必要以上に仕事を増やしてしまうこともよくあります。スペインの芸術家サルバドール・ダリは自伝の中で「自分は天才である」と書いており、それを証明しようとした作品においては、制作時間が通常よりもかなり長くなったという逸話もあります。自分の爪痕を残さなければいけないという過度な強迫観念は、仕事の量を膨張させることにつながります。
(3)印象操作――努力していると見られたい欲求
たとえば、上司の職場内での会話で「あいつは最近たくさん残業して頑張っている」と評価しているようなコメントを耳にしたとします。そうすると、「残業をたくさんする=努力している」というのが上司の評価基準の一つであると認識されるようになります。そうなると、上司や同僚に「努力している印象」を与えるために、(本来であれば残業が必要ない状況であったとしても)長く働こうとしてしまいます。
成果を出すことよりも、自分の印象を良くすることが目的化してしまうと、「非効率であっても仕事量をたくさん増やす」ことに熱心になってしまいます(極端な場合、余計な仕事を増やすことが、本人にとっての感情報酬となっているケースもあります)。







