ヘッドセットを着けた2人の女性写真はイメージです Photo:PIXTA

「名前を変えただけで、仕事への向き合い方まで変わる」――。そんなことが本当にあるのか。実は、組織の役割や仕事に新しい名前を与えることで、働く人の意識だけでなく、周囲からの見られ方や評価軸まで変わることがある。なぜ名前を変えるだけで、仕事の意味や誇りまで変わっていくのか。物語や企業の事例から、組織変革を後押しする「名前」の力をひもとく。※本稿は、川内正直『マネジャーのための時間管理術で最高のチームをつくる方法』(翔泳社)の一部を抜粋・編集したものです。

新しい役割を定着させる
想いを込めた「名前」の力

 新しい組織時間設計図(編集部注/組織の役割分担と、メンバー一人ひとりの時間配分を決める計画)に移行するということは、時間の使い方や役割分担などを全体的に見直すということでもあります。

 そもそも組織変革と呼ばれるものは、組織成果と個人の欲求充足の両方を満たすために実施します。どちらか片方のための計画だと認識されてしまうと、組織の力を十分に引き出すことができなくなってしまいます。

 リーダーである管理職自身が、自分の言葉で新しい組織時間設計図の目的と目標の両面を伝え続けることが重要です。

 その際に有効なのが、「想いを込めた新しい名前をつける」ことです。

 何かの変化を仕掛ける時には、誰しも不安になるものです。その不安をごまかすために、自分を守る防衛メカニズムが働き、新しい方針に対して批判的な言動をしてしまう人が出てくるというシーンを見たことがある人は多いのではないでしょうか。

 そのような批判的な言動によって、せっかくの変革の機運がしぼんでしまうことは少なくありません。

 そのような事態を防ぐためにも、細かいように見えますが、先んじて想いを込めた新しい名前をつけることは非常に重要なアクションです。

『千と千尋の神隠し』に見る
名前をつけることの大事さ

 名前をつけることの大事さを示すために、もう少し「名前をつける」意味について補足していきます。わかりやすくするための例として、『ピノキオ』と『千と千尋の神隠し』を取り上げたいと思います。

 まず「ピノキオ」ですが、ゼペットじいさんは、自分に子どもがおらず、木でつくった人形に「ピノキオ」と名づけてかわいがります。「いつか本当の子どもになってほしい」という彼の願いを、妖精の力とピノキオ本人の努力で実現していく物語です。

 ちなみに、ピノキオの原作はイタリア語で書かれており、「Pino」は松の木、「Pinocchio」は松の実を指します。今は松の実のようにかわいい存在だが、将来は松の木のように太く立派に育ってほしいという想いが込められているそうです。

 ピノキオはいたずら好きで、嘘をついて鼻が伸びたりしますが、最終的には成長して本物の「人間の子ども」になれたのは、ゼペットじいさんが「想いを込めた名前をつけた」ことがきっかけだと言えます。

 逆に、『千と千尋の神隠し』の「湯婆婆」は、千尋を名前で呼ばず「千」と呼ぶなど、アイデンティティを奪って支配しようとします。自分の本当の名前を忘れたら元の世界に帰れなくなるという湯婆婆のつくったルールが、この物語の大きな特徴です。

「名前をなくしただけで支配されるのか?」という疑問が出てくるかもしれませんが、国や地域を問わず「名前=アイデンティティ」と結びつける話は数多くあります。自分らしさを失う、支配されることを避けるために、本当の名前を知られてはいけない、呼んではいけないという風習も昔のアジア地域ではよくあったようです。