パソコンを囲んで困った表情をする5人のビジネスパーソン写真はイメージです Photo:PIXTA

「頑張っているのに、なぜか成果が出ない」――そんな職場には、共通する落とし穴がある。誰もサボっていない。会議も資料作成も残業も、みんな懸命にこなしている。それなのに、仕事が成果につながらず、疲労だけが積み上がっていく。実はそれ、「アクティブ・ノンアクション」という“忙しいのに何も前に進まない”状態かもしれない。なぜ人は、仕事が空回りしていることに気づけないのか。管理職こそ知っておきたい、忙しさと成果が結びつかない職場の構造を解説する。※本稿は、組織人事コンサルタントの川内正直『マネジャーのための時間管理術で最高のチームをつくる方法』(翔泳社)の一部を抜粋・編集したものです。

社員にやる気も行動力もある
それなのに成果を出せない理由

 厄介なのは、「ほとんどのメンバーが頑張っているように見えるのに、成果が出ていない組織」です。誰もサボっていなさそう。むしろ、残業もみんな多いし、仕事にはきちんと向き合っているように感じる。掲げられたことを遂行しようとしている様子もある。ただ、それでも結果がなかなか出ない。達成感も小さく、疲労感と漠然とした未来への不安だけがじわじわと積み重なっていく。

 苦戦している、何かうまくいっていないように感じる職場の大半で見られるのは、このような組織状況ではないでしょうか。

 もちろん、「本気なのか?」「すべての力を出し切っているのか?」と問われれば、大半の組織でYesとは言い切れないと思うので、十分に改善の可能性はあります。ただ、「頑張っているようで成果が出ない」という状態は何となくモヤモヤした感情を生むものです。

 この「頑張っているようには見える」という状況の解像度を上げていくために、一つ紹介したい考え方があります。

 ハイケ・ブルックとスマントラ・ゴシャールの共著『意志力革命』(2005年、ランダムハウス講談社)で提示されている、「アクティブ・ノンアクション(Active Non-Action)」という概念です。

図表 アクティブ・ノンアクション同書より転載 拡大画像表示

 ちなみに、約2000年前のローマ帝国の第5代皇帝ネロの家庭教師でもあり、ブレーンでもあったルキウス・アンナエウス・セネカは次のように書き記したとされています。

大多数の人々は仕事を求めて当てもなくぶらぶらとし、あらかじめ意図したことではなく、たまたま出くわしたことを行うだけだ。それはちょうどアリたちが灌木の上を這い回り、そこから無目的にてっぺんの枝まで這い上がり、再び地面まで下りてくるようなものだ。この状況を「あくせくしながらも結果として何もしないこと」と称しても、あながち不当ではないだろう。

 つまり、今に始まった話ではなく、2000年以上前から、このアクティブ・ノンアクション(忙しくしているが、目的意識を伴った行動はできていない)状況に悩んでいたということです。

「頑張っているつもり」の人ほど
仕事の空回りに気づきにくい

 現代の私たちの企業活動においては、具体的には次のような活動が典型です。

● 目的の見えない定例会議
● 社内報告のための大量の資料作成
● 形骸化したルーティン業務
● やめる理由が見つからない「過去の慣習」

 ただ、実際には、「Non-Action:目的意識を伴って成果に結びつく確率の高い行動をしていない」と認識するのはなかなか難しいです。

 隣の部署を見てみたり、異動後にもともと所属していた部署を振り返ったりするなど、客観的な視点を持っていれば気づけることもあるかもしれません。