2026年4~5月に行われた為替介入の総額

財務省によれば、4月30日から5月6日にかけて行われた円買い介入の総額は、11兆7349億円に上る。これに加え、同年7~8月にも為替介入が行われた。その詳細はまだ公表されていないが、ほぼ同規模の外貨準備が投入された可能性が指摘されている。なお、7月31日には米国もユーロ売り円買いで協調した。日米協調介入は2011年3月以来15年ぶりで、円買い協調介入に限れば1998年6月以来、実に28年ぶりとなる。
それにもかかわらず、為替介入の効果は今のところ限定的だ。何しろ、日米当局が本当に志向しているのは、ドル円レートの押し下げよりも、国債利回りの抑制である。日本では、積極財政を支えるため、日本銀行に国債の買い支えを求める声が強まっている。その結果として円安が進めば、為替介入で対応するという魂胆だ。
これを快く思わないのが米国だ。米国側は、円買い介入の原資として米国債を売却される可能性を警戒しているとみられるためだ。結局のところ、日本も米国も自国の金利を抑制したいという点では同じであり、ともすれば利害が対立しかねない。そうした状況下、円買い介入という一点においてのみ合意している、いわば呉越同舟の様相を呈しているわけだ。
米国のベッセント財務長官が促す日銀の追加利上げについても、どこまで通貨防衛の効果を発揮するかは疑わしい。短期金利が数十ベーシスポイント上昇したからといって、日本への投資を増やす海外主体や、海外への投資を控える国内主体は、皆無に等しいだろう。
だからこそ、日銀が過去3年間に進めてきた利上げは、通貨防衛の意味合いを強く持っていたにもかかわらず、為替市場の方向性を転換させるに至っていないのだ。これは日本に限ったことではない。通貨防衛を企図して中央銀行が利上げを行いながら、自国通貨安を止められなかったケースは、先進国、途上国を問わず、枚挙にいとまがない。
まして、「利上げをすれば長期国債利回りが低下する」との主張は、極めて根拠に乏しいと言わざるを得ない。現在の日本における物価上昇は、人口動態を背景とした生活必需品の供給不足に起因する。こうした物価上昇に利上げで対応する政策は筋が悪い。当然、利上げを実施しても物価上昇を抑制できないのであれば、長期国債利回りの抑制効果も期待しにくい。
本気で円安を止めるのであれば、少なくとも国債利回りの上昇を甘受する必要がある。それも回避したいのであれば、財政収支赤字を縮小することが本筋となる。
(みずほ証券エクイティ調査部 チーフエコノミスト 小林俊介)







