中国の駆逐艦が今年、奄美大島付近の海峡を少なくとも10回通過したことが確認されている中国の駆逐艦が今年、奄美大島付近の海峡を少なくとも10回通過したことが確認されている(写真は奄美市)

【瀬戸内】中国の艦艇が日本の奄美大島付近の海域を航行することに、鹿児島県瀬戸内町の鎌田愛人町長は神経をとがらせている。

 元相撲取りでがっちりした体格の鎌田氏は、東シナ海と太平洋を結ぶ狭い海峡でいつか衝突が起きるのではないかと懸念している。

「危機感を抱いている」と鎌田氏はインタビューで述べた。同氏の執務室は、漁船やクジラ観察船が出港する港から数百メートルの場所にある。

 日本の監視活動により、中国の駆逐艦が今年、奄美大島付近の海峡を少なくとも10回通過したことが確認されている。2025年はゼロだったが、今年は2024年の15回を上回るペースだ。

「これは明らかな挑発だ」。国際安全保障を専門とする、青山学院大学の松田拓也助教はそう述べた。

 日本は現在、第2次世界大戦以降で最も厳しい安全保障環境に直面していると、当局者らは表現している。

 中国は増大する軍事力を誇示し、東アジア全域で海洋権益を主張し、米国が長年優位を保ってきた西太平洋での活動を活発化させている。

 日本の近隣諸国である中国・北朝鮮・ロシアの間で連携が深まっている状況は、日本の安全保障や、日本経済を米国などと結ぶ重要な海上交通路の安全性に疑問を投げかけている。

 北朝鮮はここ数年、近隣の日本や韓国を威嚇するために設計された短距離ミサイルへの注力を強めている。この兵器には戦術核も含まれる。日本の当局者らによると、ロシア軍は日本周辺の海域・空域での活動を拡大している。日本とロシアの双方が領有権を主張する南クリル諸島(北方領土)付近での実弾ミサイル演習もその一環だ。

 また、これらの国々は日本が軍国主義に逆戻りしているなどと批判を強めており、日本が進める防衛力強化は第2次世界大戦時の侵略行為と同様だと主張している。

 一方、日米同盟は圧力にさらされている。ドナルド・トランプ米大統領は、米国の安全保障の傘にただ乗りしていると見なす国々を非難しており、最近では、ホルムズ海峡の開放を目指す米国を支援するために艦艇を派遣しなかったとして、日本を含む国々を批判した。トランプ氏はアジア諸国に、有事の際に支援してくれないのではないかという疑念を植え付けた。同氏はまた、米国が台湾を防衛すべきかどうかにも疑問を呈している。さらに、韓国軍との合同演習計画を縮小したり、日本を拠点としていた米原子力空母「ジョージ・ワシントン」を中東に再配備したりした。

 それでも米国は、今夏に太平洋で行われた大規模な国際海上演習で、アジアの同盟諸国と軍事計画面で緊密に連携していることを示した。今月には米国・韓国・日本による3カ国演習がさらに計画されている。米国はまた、太平洋全域に米軍を分散配置する戦略の一環として、フィリピンでの軍事的プレゼンスを拡大している。

 安全保障環境の悪化に伴い、日本の高市早苗首相が推進する防衛力強化の動きが加速している。高市氏は防衛予算を国内総生産(GDP)比2%へと倍増させたほか、日本が武器を海外に販売したり対外情報機関を保有したりすることを妨げてきた戦後の平和主義的な制約を緩和した。

 防衛計画担当者らは、ウクライナで長期化している戦争から得た教訓を踏まえ、有事の際に日本が長期防衛に備えられるよう、国の安全保障の優先事項も見直している。