ほかの生物の体に菌糸を突き刺し、必要な栄養分を吸収して生きる「寄生性」の菌類。彼らは単に栄養を奪うだけでなく、相手の細胞の働きを妨げ、時には生命機構そのものを乗っ取ってしまう。農作物を赤茶色に変色させて枯らしてしまうさび菌の脅威から、昆虫を動けなくして死骸から繁殖する激しい攻撃性、ヒトの皮膚炎のような真菌症まで。寄生性の菌類が選んだ生存戦略を『アメリカの中学生が学んでいる 14歳からの生物学』から紐解く。(ダイヤモンド編集局)

さび菌に寄生された葉の写真。Photo: Adobe Stock

相手の栄養を奪う「寄生」と真菌症

菌類は大量の栄養分を得るために、ほかの生物の身体に菌糸を突き刺して、必要な栄養分を吸収する。
一部の種の菌類はこの手法をもっと攻撃的に利用して、相手の細胞の正常な働きを妨げてしまう。これは相利共生関係ではなく、寄生関係である。
寄生性の菌類が引き起こす病気を、真菌症という。

一部の菌類は、さまざまな方法で植物に害を与えて枯らしてしまうことがある。
そのような菌類の胞子は、植物体から植物体へと運ばれて、ごく短期間で大量の植物に感染する。
菌糸が植物細胞に侵入して栄養分を残らず吸い取ってしまい、植物細胞が正常に働かなくなることもある。

植物を乗っ取る「さび菌」の脅威

寄生性の菌類の中でも有名なものの1つが、さび菌である。
さび菌は葉・茎・果実などの部位に取り付く。そして菌糸を使ってその植物体の生命機構を乗っ取り、胞子を作って繁殖する。
葉に取り付いたさび菌は、新たな胞子を作って、ほかの葉に感染する。

さび菌はさび色の胞子を作って、感染した植物を赤茶色にしてしまう。

昆虫を動けなくする攻撃性

一部の菌類は動物に寄生することもある。
植物細胞と同様に動物細胞にも害を与え、細胞の機能を破壊してしまう。
動物の細胞は多様なため、菌類が原因である病気も何種類もある。
たとえば、哺乳類と昆虫では異なる病気にかかる。

昆虫などの小型無脊椎動物に対しては、菌類は非常に攻撃的になる場合がある。
感染した昆虫は餌を取れなくなったり、動けなくなったりする。
やがてその昆虫が死ぬと、菌類はその死骸の細胞から栄養分を吸収し、胞子を作って繁殖する。

ヒトや大型動物への影響

ヒトやイヌなどの大型脊椎動物の場合、菌類は広がってもさほど害をおよぼさない。
害の少ない真菌症の例が、皮膚がヒリヒリしてかゆくなる皮膚炎である。
ヒトの皮膚に対する菌類の感染は、医薬品を使用して清潔な状態にすればほぼ必ず治療できる。