そんなとき出会ったのが『易経』でした。

『易経』が語るのは、「この世は変化である」つまり、「あきらめるのはまだ早い」「春は必ず来る」ということです。救いのないように見える状況にあっても、必ず変化がある。

 変化を待つことは楽なことではありませんでしたが、『易経』を信じ、余計なことをせず変化を待つことで、こうして作家になることができたのです。

成功しているときほど
足元をすくわれやすい

 順風満帆のときこそ、慢心せず、得意にならず、謙虚に、逆風に転じるときの備えをしておきましょう。

「亢龍(こうりゅう)悔いあり」

『易経』でもっとも力強い「乾為天(けんいてん)」という卦からの引用です。

 少しずつ成長を重ね、とうとう力がみなぎった飛龍が、風や雲をしたがえて天に上る、というストーリーなのですが、実は突然のバッドエンドを迎えます。天に昇った龍は、自分に酔い、最後は行き過ぎた龍「亢龍」になる。深い教訓が込められています。

 では、いったいどうすべきだったのでしょう?

 慢心することなく、周りの支援に感謝する、絶頂期にこそ、後継者を育てて道をゆずり、自分は花道をいさぎよく去る。それが答えだと言います。

 筆者は前述のとおり、それを守らなかったために大失敗をしました。20代、30代、とせっかく積み上げたキャリアを、40代後半のまさに肝心なときになって棒に振ってしまったのです。

赤字事業を止められなかった
リーダーの痛恨の失敗

 ちょっと待てと、止める勇気を持てる人こそが、大人です。なかなか難しく、誰にでもできることではありません。が、学ぶからにはなんとか、その域に至りたいものですね。一緒に成長していきましょう。

 直木賞を受賞し映画化もされた小説『宝島』(真藤順丈著、講談社)にこういうセリフがあります。

「この世界には、いったん転がりはじめたら止められないものがあるさ。貧乏とか病気とか、暴動とか戦争とかさ。そういうだれにも止められないものに、待ったをかけられるのが英雄よ。この世の法則にあらがえるのが英雄よ。」