筆者もかつて、担当する新規事業が赤字を続けていることは重々承知でありながら、自分から「やめよう」とは言い出せませんでした。皆からの信頼を失うことが怖かったのです。

 しかし結局、赤字が巨額となり、トップからストップがかかったことで、かえってそれにより信頼を失いました。いまだに悔やんでも悔やみきれません。

 ブレーキこそ、リーダーの役割です。リーダーしか踏めないものなのです。

成功譚よりも失敗談を
聞くほうが勉強になる

 恥を知りましょう。悔いを知りましょう。それを学べる実体験を増やしましょう。恥を知る人間は恥をかかなくなり、悔いを知る人間は悔いがなくなる。それが道理だからです。

 失敗を恐れずにチャレンジをしましょう、という教えです。確かに、強いのは、失敗経験がある人ですよね。

 筆者も、自社で「リーダー養成プログラム」を主催していますが、なかでも好評なのは「失敗談」です。

 部門長や役員に頼んで経験談を話してもらう企画を7年続け、参加者の要望を聴いている内に、「失敗談が一番好評」なことがはっきりしてきました。以降はずっとお願いするようになったのですが、確かに勉強になります。

『リーダーをつくる123の言葉 超訳『言志四録』』書影『リーダーをつくる123の言葉 超訳『言志四録』』(佐藤一斎著、小椋浩一訳・解説、PHP研究所)

 成功談では、その人特有の良さばかりが出てしまい、その人だからできた、と受けとめがちで、なかなか自分ごとにおきかえるのは難しいものです。

 でも失敗談なら、すごい先輩でも失敗があるのだとわかります。またその背景や流れまで聞けば、パターンとして自分の身におきかえられるので、「同じ失敗を繰り返さない」ための智慧が生まれてきます。

 また、聞いている内に気づいたのですが、やはりすごい人には「すごい修羅場経験」があります。要は、「その人のすごさ=その人の修羅場経験のすごさ」なのではないでしょうか。

 よく言われる「一皮むけた経験」とは、失敗という修羅場で磨かれることを指すのだ、ということを学んでいます。