佐藤優 知を磨く読書
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最前線で働くビジネスパーソンが押さえておきたい、時代の変化とその背景を理解する上で欠かせない注目書籍を作家で元外交官の佐藤優さんが厳選する。プーチン大統領の精神的基盤になっている思想とは?北朝鮮の国策転換で見えた、朝鮮総連との意外な関係とは?部下と信頼関係を構築できる上司がしていることとは?『プーチンの歴史認識』『金正恩 崖っぷちの独裁』『上司の「コミュ力」大全』の3冊から「ここだけは読んでほしい重要な箇所」を抜粋して紹介する。(作家・元外務省主任分析官 佐藤 優)

「ロシアこそが世界を救う」
プーチン大統領の精神的基盤になっている思想

 上月豊久著『プーチンの歴史認識』は、ロシアの内在的論理を理解する上での必読書だ。

 上月氏は、外務省の欧州局長、大臣官房長、在ロシア日本国特命全権大使を歴任した有能な外交官であるが、日本政府や西側連合のポジショントークとは本質的に異なるプーチン分析をしている。

 それは歴史に学び、なぜプーチン氏のような権威主義的指導者が生まれたかという謎を解くことだ。例えば、モスクワは「第三のローマ」であるという終末論的な国家観について上月氏は以下の見方を示す。

書影上月豊久著『プーチンの歴史認識 隠された意図を読み解く』新潮社、2026年2月刊行上月豊久著『プーチンの歴史認識 隠された意図を読み解く』新潮社、2026年2月刊行

〈モスクワ大公国がビザンティン帝国の継承者であるという考え方は、16世紀前半になると、ロシア正教の中心地として知られるプスコフの修道士フィロフェイによって「第三のローマ」という考え方に理論化されていく。
 フィロフェイは、イワン三世の次男にあたるヴァシリー三世の側近へ宛てた手紙の中で「すべてのキリスト教帝国は一つの帝国(モスクワ大公国)へと集まってきた。二つのローマ(ローマとコンスタンティノープル)は滅んだが、第三のローマは立っており、第四のローマは存在しないであろう」と述べているという〉(99ページ)

 ロシア国家は単なる統治機構ではなく、精神的にも国民の支柱となっている。

 上月氏は、〈「第三のローマ」という考え方は、ロシアこそが世界を救うというメシアニズム的な国家観を生み出した面も否定できない。この考え方こそが、その後のロシア拡張主義の精神的基盤をなしており、現在のプーチン大統領の行動や思考にも、明らかに「第三のローマ」という考え方を見出すことができる〉(101ページ)と強調する。

 評者も同じ意見だ。さらにプーチン氏は、世界の保守主義的国家の政治的、精神的ネットワークの結節点になる機能を現代のロシア国家に付与している。こういう形で「第三のローマ」思想の国際化を図っているのだ。

 上月氏のような実務経験に裏付けられた高度な学識を持つ知識人がマスメディアや論壇で縦横無尽に活躍してほしいと思う。

将来的には朝鮮総連が
北朝鮮の影響から離れる可能性

 牧野愛博著『金正恩 崖っぷちの独裁』を読むと北朝鮮がかつてない転換を行っていることが分かる。