家族のためを思って、自分の気持ちをぐっと我慢する。そんな親の何気ない習慣が、実は子どもの「気持ちを言葉にする力」を弱めているかもしれません。なぜ親の我慢が子どもに影響するのでしょうか。『12歳までに身につけたい「ことば」にする力 こども言語化大全』(ダイヤモンド社)の著者で文章の専門家・山口拓朗氏が、家庭で気をつけたい親子のコミュニケーションについて書き下ろします。

「気持ちを言えない子」の親が無意識にしているNG習慣Photo: Adobe Stock

家庭の会話が「言葉」ではなく「空気を読む」になっていないか

「自分さえ我慢すれば……」。家族内で、こんな気持ちを抱いたことはないでしょうか。とくに親という立場になると、「家族のために」と自分の気持ちを後回しにし、我慢することが習慣になりがちです。
 
忙しさの中で不満や疲れを飲み込み、なんとかやり過ごす。そうしているうちに、自分の感情を言葉にする機会が減っていきます。

 しかし、その我慢は無言のプレッシャーとして家族に伝わります。
「なんとなくお母さん(お父さん)、機嫌が悪そう」と、子どもは言葉ではなく、顔色や態度で親の状態を読み取るようになるのです。これが続くと、家庭の会話は「言葉」ではなく「空気を読む」ことが中心になっていきます。

 たとえば、家事や仕事で疲れているとき、「別にいいよ」「大丈夫」と言いながら、実はイライラしている。子どもが騒いでいるときに、本当は「今は静かにしてほしい」と思っているのに、黙って片づけを続けてしまう。こうした我慢の積み重ねが、「察してほしい」という無言のサインになっていきます。

親の我慢が、気持ちを言葉にすることを抑制させる

 怖いのは、その親の態度が伝染し、子どもも「気持ちは隠さなければいけない」「言葉にするのを我慢しよう」と学習してしまうことです。親の我慢が、子どもの「気持ちを言葉にする力」を弱めてしまうのです。

 この罠に陥らないために必要なのが「感情や状態の言語化」です。
「別にいいよ」ではなく「ちょっと疲れてるから、外出はパスするね」。「大丈夫」ではなく「お腹が空いてイライラしているから先に食べるね」。このように感情や状態を具体的に伝えることで、子どもは初めて親の気持ちや状態を正しく理解できます。

 一見すると、家族のための我慢は、優しさに見えます。しかし、その我慢が不機嫌さを招き、「察してほしい」という空気を生み出すとしたら本末転倒です。

 あなたがもし家族のために我慢している自覚があるなら、頑張りすぎる自分を少しだけ解放して、素直に言葉にしてみましょう。親が自分の気持ちを言語化する習慣を持てば、子どもも変に気を遣わずに済み、自分の気持ちを言葉にする力も自然と育っていきます。