打率わずか1%の人でも、100打席立てばヒットが出る確率は63.4%――。『人生の経営戦略――自分の人生を自分で考えて生きるための戦略コンセプト20』の著者・山口周さんは、私たちの直感と確率がいかに乖離しているかを示しながら、「失敗し続けることは、実は意外と難しい」と語ります。さらに、成功がもたらすリターンと失敗がもたらすロスには、見逃せない「非対称性」があるのだとか。仕事で失敗するのが怖い人にこそ知ってほしい、挑戦の数学です。(構成/小川晶子、ダイヤモンド社書籍編集局)
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失敗は忘れられ、成功は一生モノになる
――創造性を向上させるには、とにかくたくさんのアウトプットを出すことだという話を伺いました。極めて優れたアウトプットを増やすには、同時に極めてダメなアウトプットも生まれるが、それでいいのだという話でした。ただ、やはり失敗が怖い人は多いと思います。
山口周氏(以下、山口):知っておいてほしいのは、「極めて優れたアウトプット」がもたらすリターンと「極めてダメなアウトプット」がもたらすロスには非対称性があり、しばしばロスよりもリターンの方がはるかに大きいということです。
なぜなら「極めてダメなアウトプット」は無視され、すぐに忘れられるのに対して、「極めて優れたアウトプット」はその人の評判やネットワークといった社会資本を一気に厚くして、生涯にわたって資本の形成に貢献してくれるからです。
長打が大きなリターンを持続的に生み出す一方、凡打は些細なロスを一時的に生むだけなら、リターンを最大化する合理的な戦略は「とにかく打席の数を増やす」ことになります。
若いほど「打席に立つ」のが合理的
――年齢によって、この戦略の有効性は変わりますか。
山口:このリターンとロスの非対称性は、年齢が若ければ若いほど大きくなります。優れたアウトプットがもたらすリターンは、その後の人生の長きにわたって社会資本となります。つまり、ホームランを打つタイミングが早いほど、リターンの総量は大きくなるんです。
一方で、ダメなアウトプットのロスは年齢を経るほど大きくなります。若い頃なら「グッド・チャレンジ」「意気だけは良いね」と笑って済まされた失敗も、年齢を追うごとに厳しい評価に晒されるものです。成功・失敗の確率は人生を通じて一定でも、失敗のコストは人生の後半ほど高くなってしまうわけです。だとすれば、なるべく若いときにたくさん打席に立つのが合理的な戦略です。
打率1%でも、100打席で63.4%
――若い頃に、失敗ばかりが続くと心が折れてしまう場合もありそうですが……
山口:失敗し続けるのは意外と難しいんですよ。私たちの直感と確率は、往々にして大きく乖離します。
例えば、サッカーのフィールド上にいる選手と審判の合計25人の中に、同じ誕生日の二人が「いる」と「いない」、どちらに賭けますか?
この質問をすると9割以上の人が「いない」を選びますが、実際に計算すると、同じ誕生日の二人がいる確率は56.9%。「いる」に賭ける方が正解なんです。40人のクラスなら89%にもなります。
同じことが打率と打席数にも言えます。「打率1%」の人が1打席でヒットを打つ確率は当然1%ですが、100打席に立てばヒットが出る確率は63.4%になるんです。打率が1割なら、100打席で一度もヒットが出ない確率は0.1%以下、つまりほぼ確実にどこかでヒットが出るんです。そして一度ヒットが出れば、次のヒットはさらに出やすくなり、人生は大きく変わっていきます。
打率には運が関わるため、高めるのは簡単ではありません。しかし「打席の数」は、自分の意識次第で増やすことができます。やはりフォーカスすべきは「打席に立って思いっきり振る回数」なのです。





