さらに、ヒグマの死体が発見された位置からおよそ30m上流で、大学生の遺体が見つかりました。発見位置は、3人の消防隊員が襲われた登山道上の位置から直線でおよそ50m離れた場所です。どのような経緯で大学生の遺体がその位置にあったのかについてはわかっていません。周囲の調査が行なわれましたが、ヒグマによる襲撃場所や大学生が死亡した場所を特定できるような痕跡は発見されませんでした。
遺体発見場所からさらに20mほど上流で大学生の所持品が発見されましたが、リュックに食料は入っておらず、荒らされたようすもなかったといいます。後に、大学生は発見される4日前の10月29日に単独で登山を開始したことが明らかになりました。
後日、警察の調べによって、死体で見つかったヒグマの胃の内容物のDNA分析結果が死亡した大学生のものと一致し、当該個体が大学生を襲ったヒグマであったことが確認されました。また、前臼歯歯根部を用いた年齢査定によって、そのヒグマは満2歳であったことも明らかになりました。
消防隊員への接近は捕食が
目的だった可能性が高い
一連の事故が発生する以前に、この地域では人につきまとったり人の食物を奪ったりするような問題行動をとるヒグマの情報は得られていませんでした。また、大学生が襲われた事故については、痕跡が乏しく目撃者も不在です。ヒグマがどのような経緯で被害者を襲撃したのか、はじめから大学生が持っていた食料をねらう、あるいは捕食する目的で大学生を襲撃したのかどうかについてはわかりません。加害個体の年齢を考慮すると、人に対する経験が浅く、好奇心から人に接近し、結果として襲撃に至った可能性も考えられるでしょう。
一方で、3人の消防隊員が襲われたとき、加害個体には唸る、威嚇する(ブラフチャージ)など興奮したようすがまったく観察されず、消防隊員らに対して捕食目的で接近した可能性が高いといえます。大学生の遺体を食物として確保し、それを守ろうとした可能性も考えられますが、遺体の発見現場から直線で約50m、標高差約35mもの距離で、消防隊員たちの事故が発生したことをふまえると、その可能性は低いと考えられるでしょう。







