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かつて、秋田県鹿角市では、わずか2kmほどの範囲でツキノワグマによる人身事故が相次いだ。2016年5~6月に少なくとも6件が発生し、4人が死亡。死亡した人の遺体はいずれもクマによる食害を受けていた。一方で、クマと20分近く対峙した末、即席の竹槍や棒で抵抗して生還した人もいた。これらの事故を引き起こしたのは、果たして同じ1頭のメスグマだったのか。現場調査の結果から、連続した襲撃の背景を専門家が読み解く。※本稿は、動物生態学者の山崎晃司氏の編著『クマに出遭ってしまったら?』(PHP研究所)の一部を抜粋・編集したものです。
高齢男性が立て続けに襲われ
遺体はいずれもかじられていた
2016年に鹿角市十和田大湯地区で起こった人身事故は、農地、牧草地、ササやぶなどがモザイク状に存在する東西2kmほどのクマの行動範囲から考えれば極めて狭い範囲で、ごく短期間に連続したものでした。少なくとも6件におよぶ事故で4人が死亡し、死亡した全員の遺体が食害を受けていたことも大きな衝撃をもたらしました。
人々を襲ったクマは複数いたという意見もありますが、6件目の被害者の捜索で1頭のメスグマが捕殺されると、人身事故は終息に向かいました。遺体や事故現場からは、襲ったクマの遺伝子情報を得られなかったので、人を襲うクマが1頭だけだったのか、複数いたのかは、今でもわかっていません。
現地に入った日本クマネットワークの調査チームが、現場検証を行なった結果を報告書としてまとめています。
●第1の事故(死亡事故1件目)【5月20日 十和田大湯字熊取平】
79歳の男性が車で朝からタケノコ採りに出かけました。帰宅予定だった夕方になっても戻らないため、その日の夜に家族が警察に通報。翌日の朝から県警などが捜索していたところ、男性が駐車していた車から100mほど離れた地点で遺体が見つかりました。遺体の顔や左半身には多くの爪痕や咬み跡がみられました。
●第2の事故(死亡事故2件目)【5月22日 十和田大湯字熊取平】
78歳の男性が朝5時頃から77歳の妻と2人でタケノコ採りをするため、山に入りました。7時半頃、ササやぶの中にいた男性が「クマ、クマ」と叫びながら出てきて、棒でクマを牽制しながら近くにいた妻に「逃げろ」と告げます。妻は逃げて無事でしたが、男性の行方はわからなくなってしまいました。県警や消防が捜索したところ、午後1時20分頃、男性が心肺停止の状態で見つかりました。妻の話では、大きなクマだったといいます。遺体は、ササやぶの外の見通しのよい草地で発見され、胸に損傷が確認されました。
●第3の事故(死亡事故3件目)【5月25日 十和田大湯字田代平】
65歳の男性がタケノコ採りに山に入り、行方がわからなくなりました。
5日後の30日午前11時すぎ、警察署員が性別不明の遺体を発見。遺体は激しく損傷しており、クマにかじられたとみられました。遺体には土砂がかけられていました。
ササやぶで20分対峙した末に
即席の竹槍でクマの目を狙った
●第4の事故【5月26日 十和田大湯字田代平】
50代の男性がタケノコ採りの最中に、7~8m上の斜面にクマ1頭がいるのを発見。目が合うとクマはゆっくりと斜面を下って男性に近づいてきました。1mもない距離まで近づくと、真正面から向き合うように立ち止まります。ササやぶは深く、クマも男性も立ち上がれないような状態でした。竹を切ってとがらせた即席の槍を手に、クマと1~2mの距離を保ちながら20分ほども対峙したといいます。







